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未完のレース

障害者も一緒にプールへ 千葉すずさんが教える泳ぎ方 千葉すず(4・最終回)

2019/2/13

水泳教室の参加者の前で泳ぐ千葉すず(2018年12月、大阪府堺市の堺市立健康福祉プラザ)

オリンピアンの千葉すず(43)が開く水泳教室はユニークだ。子供から高齢者、障がい者から健常者まで、いろいろな人たちが一緒に泳ぎを楽しみ、学ぶ。連載の最終回は、五輪の経験を多くの人と共有しようとしている千葉の姿を描く。(前回の記事は「『五輪楽しかった』 千葉すずさん、顔上げ続けた理由」

◇   ◇   ◇

千葉すずが25メートルプールを泳ぎ始めた。フォームの美しさ、悠々とした力強いストローク、そして、世界で戦ってきたスイマーが今も放つオーラに参加者たちは圧倒されるように、プールは静まり、規則的な水音だけが響き渡っていた。

千葉の軽妙な語りで水泳教室は笑いが絶えない(堺市立健康福祉プラザ)

2018年12月、「千葉すずさんに学ぼう」と題した水泳教室が大阪府堺市の「健康福祉プラザ スポーツセンター」で行われた。お手本の50メートルをゆったりと泳ぎ、顔を上げた途端、参加者たちから「ワーッ」という歓声と大きな拍手が沸く。いつもと少しだけ違うとすれば、プールサイドには手話通訳や、目が不自由な参加者に寄り添うスタッフの姿がある点だ。

安全のため、障がい者にも健常者にも「25メートルは泳げる」との条件で募った参加者は、小学校1年生から74歳まで男女31人。視聴覚や知的障がい、内臓疾患や精神面での病などを抱えた障がい者と、健康増進のために泳ぎ続ける高齢者、少しでも泳ぎが上手になるヒントを学びたい主婦、水泳を始めたばかりのちびっこ。わずか30人ほどの集団も多様性にあふれ、互いが楽しみながら泳ぎ、時にサポートしあう。

ここは、五輪2大会連続出場を果たし、数々の記録を樹立してきた女性スイマーが築き上げた、小さいけれど、特別な理想をかなえた場所である。障がい者が自由に泳げるプールでも、普通のスイミングプールでもない。障がい者もそうでない者も、「一緒に」泳げるよう、5年前から活動している。

■レッスンは分かりやすくシンプル

教室が始まると、参加者それぞれがまず25メートルを泳ぐ。

「皆さん、それぞれに泳いでいますが、ちょっと違います。でも大丈夫! きょうの90分で、2020年に間に合うように仕上げますからね!」

「コーチ」が参加者にそう伝えると、プール内は笑いに包まれ、ギャラリー席にもマイクを通じて声が届き、付き添いや見学者たちの表情も一層柔和になる。

学校で教わる泳ぎ方や、一般的な教室でコーチされるものと、五輪スイマーに教わる技術ではあまりにレベルが違うように誰もが思う。しかしそうではない。

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