U22

生き方

かっこいい若者がつくる輝く地方 人吉から地方変える(3)

溝口然 一般社団法人グローカル代表理事/慶応大2年

2019/1/23

溝口然(みぞぐち・ぜん)です。前回の記事では、僕が高校生の頃に始めた活動について、現在に至るまでの経緯を書きましたが、今回は、これまでの地元・人吉での活動から、今後どのような未来を描いているのかについて書きたいと思います。

僕自身、高校生の頃から、進路選択の選択肢の狭さに疑問を抱き、グローカルの活動を行うことで、多くの出会いや機会がありました。そうした経験を通して、今、自分自身の中に芽生えた一つの思いがあります。 

それは、地元・人吉に「かっこいい若者」を増やしたいということです。

ここで言う「かっこいい」とは、自分なりに定義づければ、正しい知識と経験、考え方を持った自主、自立の思いを持っているということです。

地方で輝く「かっこいい若者」がロールモデルとなって、それに憧れる人がそれぞれの地域で増えていく。そうした人の流れができれば、地方はもっと良くなると考えています。

地元に戻る若者が再び都会へ

人吉市の中心部に位置する人吉城跡

しかし、若者にとって地方で自分なりのライフスタイルを実現していくことは簡単なことではありません。僕の地元である熊本県人吉市を例にお話をします。

人吉の高校生の中で、就職を希望する生徒の多くが愛知や関西などの都市圏に就職して行きます。2017年に人吉市が行なった高校へのヒアリング調査では、こうして愛知や関西などを中心とした有名企業、またはその下請け企業に就職したものの、実際の配属がイメージと違う工場のラインなどであることで期待との現実のギャップに失望し、就職後2、3年で退職し、地元に戻ってくるというケースが少なくないという現状が浮き彫りになりました。

工業高校などは、就職先が、企業の推薦枠を成績順に取り合う形となり、志望動機などはあまり重要視されず、それによってミスマッチが起こっていることが原因のようです。

こうした人口動態は、県外及び県内の20~24歳をピークとした人口流入という形でデータにも表れています。

さらに、地元に戻ってきた若者の多くは、地元企業への就業を目指すのではなく、コンビニや飲食店等のアルバイトにつくケースが多く、しばらく経つと、再び定職を求めて都会へと出ていきます。

国勢調査のデータからも20代前半の失業率が高いことからもほぼ間違いはないでしょう。

つまり、一度地元を出た若者が、いろいろな事情で仕事を辞め、戻ってきても、地元には居場所がなく再流出してしまう傾向があるのです。

地方にはロールモデルが少ない

グローカル主催イベントでの参加者の様子

このように「帰ってきた若者が再流出する」現状の中で、若い世代にとって、「地元に残ること」は決していいイメージには映りません。「やっぱり仕事もないし、都会に出ないと厳しいよね」というキャリア観が生まれてしまいます。

ではどうやってこの現状を打破していけばいいのでしょうか?

その一つにあげられるのが、「地元でかっこよく生きる若者のライフスタイルモデル」を醸成していくことではないかと考えています。

僕が、グローカルを立ち上げ、地元の高校生のキャリア教育に取り組むようになったのは、高校生の時、東京で出会った周りの志高く行動している同世代に刺激を受けたからです。 

周囲の環境や出会いが人を大きく変えるということを身をもって感じています。

だからこそ、自分自身と重ね合わせることのできるモデルとなる身近な存在というのはとても大切です。

「あんな生き方、ライフスタイルをおくってみたいな」と思わせられるロールモデルとなる存在。そうやって人は変わることができるように、同じように地方でチャレンジをする若者が増えれば、それは周りに伝染していくはずです。

聖光学院との交流で生まれたアイデアが形に

聖光学院と人吉高校の交流プロジェクト参加者

その一つの具体的な事例として、この連載の第一回で紹介させていただいた横浜・聖光学院と人吉高校の交流プログラムがあります。このプログラムの成果は、生徒たちの自発的かつ継続的な取り組みとして、現在、形になりつつあります。

交流から約2カ月後の今年9月、このプログラム中のアイデアソンで提案されたボランティア活動と観光を組み合わせた「ボラ観ツアー」が人吉市で実際に開催されました。主催者は、人吉高校2年生の黒田あかりさんと下田那央さん、聖光学院の森田大貴君です。

過疎化による人手不足が深刻化する中、都市部の高校生がボランティアの経験を求めている点に着目して、都市部の高校生が人吉をボランティアをしながら楽しむというツアーを企画しています。

アイデアソンをきっかけに生まれた企画「ボラ観」の様子

アイデアソンの後、人吉と横浜で連絡を取り合い、関係各所に自ら足を運んで企画、交渉を行い、このツアーの開催を実現することができました。

互いの学校の先生やサポーターとしての僕の関与はほとんどなく、高い志を持って彼ら自身が、失敗をおそれずに自分の描いた未来にチャレンジしていく姿はまさに「かっこいい」そのものです。彼らの取り組みは人吉でも高い評価を得て、地元のマスコミにも大きく取り上げられました。

人吉での彼らのこうした行動は、周囲の高校生やその下の世代にとって、大きな刺激を与えたことでしょう。そして、それが人吉の高校生の新たなロールモデルとなり、やがては、そうして自分で考えて行動していくことが、人吉の高校生の中で当たり前になっていくことを期待しています。

そして若い人たちの新たなチャレンジの舞台としての空気感が出来上がる。そうすることで地域はもっともっと盛り上がっていくでしょう。

そんな未来を、僕は夢見ています。

自分の生き方が一つのロールモデルに

グローカル主催イベントでの様子

進路や将来の選択肢は、知らず知らずのうちに、周囲の環境によって狭まりがちで、自然と「当たり前」が作られてしまいます。

だからこそ、地方で輝く「かっこいい若者」が増えれば増えるほど、「地方で活躍していく」というライフモデルがどんどん広まっていくと思います。

もちろん、こうした環境を作っていくことは簡単なことではありません。

しかし、僕自身、高校生の時に感じた「進路選択における機会の少なさ」に問題意識を抱いてから、起業を始め様々な経験をさせていただいてきました。僕のこうした行動は、ほんの少しは人吉の若い世代の中の一つのロールモデルとして役にたっていると思いたいですし、先に挙げた「ボラ観ツアー」の人吉高校2年生の黒田あかりさんと下田那央さんのような頼もしい後輩もいます。

これからの自分達の生き方が一つのロールモデルになり、生きる上での様々な選択の中での参考となる。結果的に「地方で活躍するかっこいい若者」が増えていければと思います。

そのためにも、まずは僕自身が、今この大都会、東京で頑張っていかなければとの思いを新たにするハタチの冬です!

グローカルでは、高校生をはじめとする地方に生きる若い世代が、「失敗を恐れずにチャレンジ」をしたり、「自身の思い描く未来を形」にできる環境をソフト、ハードの両面から整えていきたいと思います。

これからも僕たちの挑戦を応援していただけると幸いです!

溝口然(みぞぐち・ぜん)
熊本県人吉市生まれ。熊本県立人吉高等学校卒、慶應義塾大学法学部政治学科に在学中。2017年より人吉球磨地域を拠点にキャリア支援・奨学金事業を手掛ける一般社団法人グローカルの代表理事。

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