常磐貴子の『グッドワイフ』 米ドラマを大胆アレンジ
2009年からアメリカで放送されたドラマ『グッド・ワイフ 彼女の評決』。元州検事の夫が失脚し、専業主婦だった主人公・アリシアが13年ぶりに弁護士として復帰して困難に立ち向かう。テレビ版アカデミー賞と呼ばれるエミー賞など多数の賞を獲得した人気作品だ。この日本版『グッドワイフ』(TBS系)が話題になっている。
TBSのプロデューサーの東仲恵吾氏は「ヒロインが復職して奮闘するストーリーは、日本でも共感を得られると思い、企画がスタートしました」と語る。
司法取引は日本では導入されたばかりでなじみがないなど、アメリカと日本では裁判制度に異なる点がある。原作側との交渉では「日本版に作り変える」というテーマが最初からあったという。「ゼロベースで、原作サイドにこちらの考える全体の骨子を送ったんです。それで今回はリメイクではなく、日本版に置き換えて構わないとなりました。シーズン7までの中で、どの要素を使ってもいいし、設定も含めて好きなようにやっていいと言っていただきました」(東仲氏、以下同)
当初は、どの程度変えていいものか気がかりだった。例えば、原作では夫が政治家を目指すが、日本では検事出身の政治家は少なく、設定として難しい。そのような部分で出したアイデアを原作側も納得してくれた。「原作を守るためのリクエストがもっとあるかと思いましたが、むしろ『これも楽しいね』という感じで。ヒロインの人物像もアリシアはとにかく強くてたくましいのですが、日本版ではたおやかさも備えたキャラクターにするなど割と大胆にアレンジしています」
蓮見杏子(常盤貴子)は、東京地検特捜部の部長だった夫・壮一郎(唐沢寿明)が汚職容疑で逮捕されたことにより、40代半ばで突然、人生が一変。16年間専業主婦だったが弁護士に復職し、運命を切り開いていく。常盤は、TBSの「日曜劇場」枠での主演は『ビューティフルライフ』(00年)以来19年ぶりだ。「以前から常盤さんの作品を見てきて、芯の強さがありながら、どこか柔らかい優しさがあると感じていました。そこが杏子とマッチしますし、16年ぶりに復帰する設定と重なる部分があると感じ、オファーしました」
キャストは常盤、唐沢のほか、杏子に手を差し伸べる同期の弁護士・多田役の小泉孝太郎、壮一郎のライバルであり敵となる脇坂役の吉田鋼太郎ら、演技達者がそろう。「シーズン7まであり、各登場人物の情報量が多い。それに負けない人をと考え、意中の方に受けていただけました」
脚本はWOWOWで放送された『震える牛』(13年)や『血の轍(わだち)』(14年)など社会派作品を多く手掛けている篠崎絵里子。常盤とはNHKの朝ドラ『まれ』で組んでいる。「篠崎さんは骨太の作品に定評がある一方、『まれ』のように人間関係も緻密に描ける方です。この作品は社会派エンターテインメントでありつつ、人間ドラマの側面も大きい。両方をビビッドに表現できる篠崎さんにお願いしました」
事件のベースは原作にあるが、展開や結末は独自に作っている。杏子と壮一郎、多田の3人の人間関係も、ほぼオリジナル。アメリカ版のファンも新鮮に楽しめる。
(日経エンタテインメント!2月号の記事を再構成 文/田中あおい)
[日経MJ2019年2月8日付]
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