旭化成名誉フェロー 吉野彰氏 「歴史を自分でたどり近未来を予測」 若者と考える未来 大志をつなぐ

日本経済新聞社は11月5日、東京学芸大学付属高等学校(東京・世田谷)で「自分で仮説を立ててみよう」をテーマに特別授業を開催しました。リチウムイオン電池を発明した吉野彰・旭化成名誉フェローが研究課題の克服への苦闘を語ったほか、イノベーションを起こす発想法なども示してくれました。聞き手役を木村恭子編集委員が務めました。学生からは活発に手が挙がり、質疑も盛り上がりました。

《今回のテーマ》自分で仮説を立ててみよう
よしの・あきら 1972年京大院修了、旭化成入社。85年、リチウムイオン電池の基本概念を発明・確立。2004年紫綬褒章を受章。18年、公益財団法人、国際科学技術財団からジャパンプライズ(日本国際賞)を受賞。

聞き手(木村恭子編集委員) 皆さんがお持ちのスマートフォン(スマホ)の中にリチウムイオン電池が入っているのはご存じですか。今日はこの電池を発明した吉野彰先生とお話を一緒にさせていただきます。まずは先生、どんな学生でしたか。

吉野氏 小学生のとき、担任の先生にファラデーの『ロウソクの科学』という本を勧められました。自然現象をわかりやすく説明した名著で、理系を選んだ原点です。高校に入ってからも化学だけは負けないぞ、という気持ちはありました。

遺跡発掘は化学に通じる

聞き手 京大工学部に進まれて、遺跡の発掘もなさっていたとか。

吉野氏 当時、工学部で最先端の石油化学教室に入ったものですから、逆に一番古いところに入るのがおもしろいかなと。それで考古学サークルを選びました。

聞き手 とんがってますね(笑)。ご自分の人生の中では大学時代はどんな時期だったのでしょうか。

吉野氏 振り返ると、2つの意味で役立ったと思います。1つは考古学とは歴史ですよね。10年後を予測しなさいと言われて、現在から見ようとします。それだと、混乱するだけで全く見えてきません。しかし、20年、30年前の歴史を自分でもう一回、たどってみる。そうすると、なぜ今、こんな状況になっているのかがわかりますよね。その延長線上で何か未来が見えてくるはずです。

もう一つは「トレンチ」という発掘手法が化学に通じているのです。発掘ではむやみに掘ると、遺跡を壊してしまう。例えば、100メートル四方の遺跡があったとしたら、縦横4本ぐらい、幅1メートルほどの溝を試掘します。そうすると、何かにぶち当たるわけです。それをつないで全体像を理解した上で全面的に掘るのが、トレンチです。仮説を立てて、検証する研究開発そのものです。

モノをつくって、世に広めたい

京大では考古学サークルに所属し、遺跡発掘に携わった(1966年、前列左から3人目が吉野氏)

聞き手 大学の研究室に残る選択肢もあったわけですが、なぜ旭化成に入られたのですか。

吉野氏 やはりモノをつくって、それを世の中に広めたいなというので、企業を選びました。

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