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失敗恐れない中国人インターン生 ~マイクロソフトの研究所で切磋琢磨 AIの未来(6)

人工知能研究会/AIR

2019/1/29

こんにちは、東京大学大学院の兼平篤志です。前回に続き、今回は中国でインターン生として働いた時の経験や感じたことをお伝えします。中国のIT分野は、ここ十数年で急速に成長しAlibaba(アリババ)、 Tencent(テンセント)、 Baidu(バイドゥ)などの世界規模の大きさになる企業も生まれてきています。スタートアップ企業の数や大学等の研究機関の質などを総合的に見ても、ITでアメリカに迫るような勢いがある唯一の国だろうと言われています。とりわけ政府が国策として定めて、官民ともに投資をすすめているのが人工知能(AI)分野であり、最近ではこの分野の国際的な学会で発表される論文の多くの割合を中国が占めています。

私が在籍していたMicrosoft Research Asia (MSRA) は、中国・北京にあるマイクロソフト社の研究所のうちの1つで、AIを含めたコンピュータ科学系のあらゆる分野で存在感のある研究所です。私はその一部門であるMultimedia Search and Miningグループに所属するインターン生として働きました。

「ネットワーク」と「チャレンジ精神」

MSRAの友人と夕食

滞在中最も印象深かったのは、中国人研究者間の繋がりの密接さです。自分の滞在中だけでも多くの国内外の大学の先生が客員研究員としてMSRA に滞在し共同研究を行ったり、頻繁に最新の研究成果について講演を行っていました。AI分野のような発展が早い分野で成果を出すにはどれだけ早く最新の情報にキャッチアップするかというのも1つの重要な鍵となります。中国人の有名な研究者は中国国内だけでなく海外のグローバル企業や、主要な大学に多く在籍しており、現在の人工知能研究で中国人コミュニティーはとても大きな影響力を持っています。グローバルなレベルでの繋がりの強さはこの分野における中国の強さの要因だろうと思います。

もう一つ印象的だったのは中国の学生の意欲の高さです。MSRAには私の他に多くのインターン生が働いて、ほとんどの人は中国各地の大学から来た学生でした。彼らの多くは、研究についても研究以外のことも、失敗を恐れずチャレンジ精神を持って非常に活動的にやっていたことが印象的でした。中国の貧富の差は未だに大きいと言われており、良い生活をするためには大学や就職で常に多くの人と競争をしなければならないと言います。一方で、アリババ創業者のジャック・マー氏の例のような“チャイニーズドリーム”があることも中国の学生の勤勉さやアグレッシブさの一因になっているのでしょう。

国際的ではないものの多様性がある社会

北京近郊の万里の長城

生活の中で一番不便に感じたことは、どこに行っても英語が全く通じないことでした。タクシーやレストランは観光地、空港やホテルですら、ほとんどが中国人をターゲットとしたサービスであるため1単語も理解してもらえないことも多くありました。日本人は漢字が読み書きでき最悪筆談でコミュニケーションがとれるのでまだましな方で、とりわけ漢字が読めない西欧系の人などはとても苦労している様子でした。

そのようにスイスとは対照的に国際的ではないものの、様々な地方から来た人と話すうちに中国の中だけでもかなりの多様性があることに気付きました。例えば、中国の北と南では話される言葉が大きく異なり、中国人同士でも会話が大変になることもあるということを聞きました。また文化や気候、食べ物なども地域間でも違う国程の差異があるようで、自分の友人の中でも様々なバックグラウンドを持つ人がいました。そのような環境によるものか、例えば外見で中国人/外国人のように内外を明確に意識している印象は全く受けませんでした。自分も(西欧系の外見の)友人も、街中でフレンドリーに中国語で話しかけられることもよくあり、そのような外見的な違いも“ささいな違い”になってしまう所に中国のスケールの大きさを感ることもありました。

凄まじいスピードの実応と研究開発サイクル

MSRAのメンバーで撮影

中国のITが発展した大きな要因として国内市場の大きさが挙げられるでしょう。上で挙げたようなIT企業もメインは国内向けのサービスですが、世界人口の5分の1が住む国だけに会社の規模も非常に大きくなります。成長した企業はAIを含めた新しい技術の開発に投資を行い、応用研究を進めています。中には(MSRAを含む)米企業などから著名な研究者をヘッドハンティングし、高額の給料を出す企業もあると聞きます。また上で述べたように、国民性なのか失敗を恐れず新しいことに次々と取り組むチャレンジ精神を持っている人が多く、次々とスタートアップ企業が生まれています。その中にはAI関連のものも多く、実応用と研究開発のサイクルが、凄まじい規模とスピードで上手く回っているように感じます。このような規模の大きさとチャレンジ精神が、今の世界の中での中国の強さの源となっているのでしょう。

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