「ドメドメ」だった私が運営スタッフに ~できないと思うことにこそ挑戦を
"Call for Action" Slush Tokyo 2019(2)
今回インタビューをさせてもらったのは群馬県出身の東野万美さん。通称ぐんまみ。Slushが日本に上陸した2015年にボランティアとして参加し、2016年は前CEOのアンティ・ソンニネン(以降アンティ)と共にコアメンバーの一人としてSlush Tokyo 2016を運営。それ以降は500 Startups Japanでコミュニティマネージャーとして働きつつ、Slush TokyoでステージのMCとしてイベントのサポートを行ったり、バックパッカーをしていた時に訪れた中国の深圳で、現在は現地のスタートアップ企業で唯一の日本人として働いています。
留学後にどうしても英語を話せる環境をみつけたかった
―Before Slush Tokyo
~~先輩ボランティア・東野万美さんインタビュー
――それでは初めにSlush Tokyoに関わる以前のマミさんについて教えてください!
「そもそもSlush のことを知ったのが留学で出会った友達人の紹介だったのですが、大学4年次を休学してアメリカ留学に行くまでは、ずっと地元の大学に通っていたので、海外どころか県外の世界も知らない『ザ・ドメドメ』なタイプでした」
――ドメドメ(笑)。留学がきっかけでSlushと出会ったのですね。
「はい。日本に帰国して大学に戻ったあと、どうしても英語を話せる環境を見つけたいと思っていたところに、ちょうど『フィンランド発のイベントが日本で初めて開催されます! バイリンガルなスタッフを募集!』という友人のFacebook投稿を見かけて、その時にSlushに応募したんです。当時はSlushが何のイベントかさえも全く知りませんでした」
――そうだったんですね! Slushは運営のボランティアから参加者までみんな共通言語は英語ですもんね。イベントの準備とかはどうだったのですか?
「イベント3週間前に初めて説明会に参加して、その後も全体向けの説明会がある度に上京していたんですが、急遽イベントの5日前にピッチステージのボランティアリーダーに任命されて。それからは東京に泊り込みで、シフトの作成だったり、チームメンバーや登壇者への連絡、当日の準備物の用意などを社会人と協力しながらやりました。そもそも、『スタートアップピッチ』という言葉を聞いたのもこの時が初めてだったので、周囲の人たちに教えてもらうことばかりでした。当日自分のせいでボランティアが全員集まらなかったり、ステージ進行のミスがあったりして関係者に大迷惑をかけてしまったこともありましたがその失敗も今思うと貴重な経験でしたね」
――えええーー! 初Slushで急遽リーダー任命されてたのですか!
「でも、たまたま一番スタートアップと距離が近いチームのリーダーに任命されたことで、ステージ裏で彼らの意外な一面を知られたことがすごく幸運でした」
「ステージ上で、起業家が自分たちの目指している世界やサービスを英語でピッチしている姿はとてもかっこよく見えて、自分の人生をかけてやりたいことに挑戦している人がたくさんいることがまず衝撃的でした。その一方で、そんな人たちが、ステージ裏では緊張で震えていたり、不安げな顔をしているのを見た時に、『彼らも私と同じ人間なんだ。失敗することは怖いけど、勇気を出して挑戦しているだけなんだ。それが他の人との違いなんだ』ってことを実感して、不思議と励まされた気がしました。価値観が劇的に変わった瞬間でしたね」
――やばーー! 鳥肌立ちました。Slushってボランティアがいないと成り立たないってくらいボランティアの存在が大切なイベントだけど、ボランティアを通してスタートアップのリアルを体感できるし本当に視野が広がるし、本当に価値観も大きく揺さぶられますよね。
「本当にそう思います。もっと多くの学生や若い人にも同じ様な体験をしてほしいし、『自分も何かに挑戦したいし、できるかも知れない』と自信を持てる人を増やしたいと思ったんです。だから、その後もSlushに携わりたいって強く思って、2ヵ月後に勝手にボランティア向けのお疲れ様パーティーを企画しました(笑)。 想定していたよりも全然人は集まらなかったんだけど、そこに来てくれた人はその後もSlushを支えていたり、応援してくれる人たちだったと思います」
――ボランティアパーティーいいですね! 今年もやりたいな~。Slushってボランティア経験のある人が何年も連続して参加してるイメージあるんですけど、それはなんでだと思いますか?
「Slushの根幹でもある、『年齢や経験、肩書きや性別も全て関係なく誰もが平等で、誰でも挑戦出来るんだよ』っていうことを一人一人がSlushを通して体感していたり、それを次の世代に伝えたいという人が多いからな気がしますね」
――Slushって本当にすごいなって改めて実感しました! スタートアップのためのイベントなのに、イベントを通してボランティア参加者が新たな世界を知るきっかけになっていたり、自信をつけていたりっていう裏ストーリーがあって、裏だけど表みたいな感じがたまらないです。
「Slushは、もちろんスタートアップを支援するイベントだけれど、その根底にはボランティア参加者や若い人の新しい挑戦を後押しするような側面もすごくあるんじゃないかなって私は今でも思いますね」
――その後はどの様な形でSlushに関わり続けたのですか?
「どうしてもSlushを続けたかったので、アンティにしつこくメッセージを送り続けて、次の年は新チームでコアメンバーとして活動しました。イベントとしては2回目の開催だったけれど、学生だけで運営するのはその時が初めての試みだったから、パートナー企業や関係者から信頼を得るのに最初はとても苦戦労しましたね。本当にいろんな人に支えてもらいながら、チームのメンバーと力を合わせて一生懸命準備をした記憶があります」
――そうだったんですね...。今も私たちがこうしてSlushを運営できているのはマミさんたちの様に先代が必死に頑張ってくれたからなんですね。泣きそうです。一生懸命準備をしていた中で今でも心に残っている言葉はありますか?
「イベント3ヶ月前に、ボランティアを400人集める必要があって、不安に押しつぶされそうになっていた時に、アンティがあるイベント登壇時に『虎穴に入らずんば虎児を得ず』と声を掛けてくれたことがあって。それを聞いて気持ちがすごく楽になったし、『出来ることもやらないと始まらないな、とりあえずやってみよう!』って思えるきっかけになりました」
ベンチャーキャピタル→深圳のスタートアップへ
―After Slush Tokyo
――それでは次にSlush Tokyo以降のマミさんについて教えてください。
「2度目のSlushが終わった後、当時のチームメイトが『この会社、まみに絶対合うと思う!』と紹介してくれたのが500 Startupsというベンチャーキャピタルでした。調べてみたら、確かに会社のカルチャーが自分の価値観とドンピシャで、それだけで応募を決めました。幸い日本オフィスの立ち上げ期にインターンとしてジョインすることができて、結果そのまま新卒入社しました」
――Slushでスタートアップを知った後に、次はスタートアップを支援する側として働いたのですね。しかもSlush繋がりでそこの会社にたどり着いたっていうのも、ただの偶然じゃない気がする。
「そうかも。500 Startups Japanの元上司も、私が運営に携わってた時にSlushで登壇していたしね」
――すごい、そんなところに繋がりが! そういうことが起きるのもSlushならではですね。
「Slushはただのイベントではなくて、魅了したり繋げたり、人の挑戦を支えたり価値観を変える可能性を秘めたムーブメントだと思う。そういうコミュニティーであってほしいし、時間をかけてそうなってきているように感じます」
――Slushはお互いがお互いを刺激しあえて、高め合える最高の場所だと私も思います。Slush Tokyoを経てマミさんはどんなキャリア選択をしたのですか?
「500 Startups Japanで2年弱スタートアップ支援をした後、今度は事業サイドに興味を持ち始めたので、今は教育ロボットとSTEM教育のソリューションを提供している、Makeblockという深圳のスタートアップ企業で働いています。会社の中で日本人は1人だし、社内公用語はの中国語はまだ話せないしで、まだまだ頑張らないといけないことだらけだけど、今自分が関心を寄せている中国という国や教育分野において、自分に何ができるのか、試してみたいなって思っています」
――さすがマミさんすぎる...。悔しいくらいかっこいい。これからもたくさんの人にSlushを経験してもらって、いろんな世界に羽ばたいていってほしいなって心から思います。自分も含めて。
「最近、当時すごくお世話になっていた方と久しぶりに再会した時に『少しずつ着実に、自分の興味関心に近づいているみたいだね。応援してるから、何かあれば頼ってね』って言われた時はうれしかったです。その方だけでなく、Slushを通して出会ったたくさんの人にこれまで支えてもらってきたので、いつか自分も誰かの挑戦を後押ししたり支えられるようになりたいですね」
Slush Tokyoを一言で言うと...
"スタート"
「私にとって、自分がこれまで知らなかった全く新しい挑戦の世界への扉を開いてくれたのがSlush Tokyoでした。私にとってSlushは人生の転機であり、スタート地点でもあります」
読者に伝えたいのは...
"DO THE THINGS YOU THINK YOU CANNOT DO."
(できないと思うことにこそ挑戦せよ)
「3年前、ヘルシンキの旧Slushオフィスのビルで見かけた言葉で、これは今の私の行動指針にもなっています。例えやりたいことがあったとしても、無意識に自分にはそれができないと思ってしまっている人は少なくないと感じます。でもそれは、自分の可能性を狭めてしまうことでもあると思うんです」
「現に数ヶ月前の私も、留学経験も無く言語も話せないのに中国で働くことは難しいことだと思っていました。でも、できるかどうかはやってみないとわからないからこそ、自分を試してみたかった。私自身、今後どの道に進んでいくかはまだ明確ではありませんが、その時々で興味はあるけどできないと思うもの、怖いと感じることにこそ挑戦していく中で、必ず道が開けると信じています」
Slush Tokyo 2019 ボランティア応募フォーム:http://bit.ly/volunteers19
(募集は1月20日23:59まで)
Volunteer Trailer 2018:https://youtu.be/HolOz7wtPp8
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