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理工系人材をどう育ててゆくか!? トップメッセージフォーラム2018 Part1

2019/1/25

産学連携による戦略的理工系人材育成と大学の役割

グローバル化や人工知能(AI)社会、人生100年時代など世界は大変革の真っただ中にある。国内では少子高齢化が急速に進むなど課題は山積、「新しい価値の創造と技術革新」を担う人材育成は待ったなしだ。日本経済新聞社は2018年10月23日、都内で次世代を支える理工系人材育成について考えるフォーラムを開催。大学と社会との協働について活発に議論した。

オープニングリマークス

企業サイドのニーズとギャップ発生

POL代表取締役CEO 加茂 倫明氏

本フォーラムのファシリテーターから「日本はあらゆる分野で世界に通用するエキスパートを育成する必要がある。その役割を担うのは大学だ」との指摘があった。

英国の大学評価機関、 QS社の世界大学ランキングで、理工系学部の上位50校のうち5校が日本の大学だ。QS社のCEOによると、優秀な人材を輩出しているが、第4次産業革命を背景に世界中で大学卒業生に対する企業のニーズが変化している。雇用者が技術者に求めるスキルにギャップが出始めている。理工系分野で企業が求める幅広い能力を持つ学生の育成が急務だ。

POLは理工系学生の研究と就職活動の両立を支援するサービスを展開している。大学教育が学生の主体的興味・選択を促すような仕組みになっていないという問題点も浮かび、多くの学生が不安を抱いている。 一方、日本の大学にはわくわくするような研究が多いことも事実。産学連携で議論し、日本の科学や社会の発展スピードを上げていきたい。

第1部:大学&企業プレゼンテーション

学生の学びの心に火をつける

芝浦工業大学学長 村上 雅人氏

建学の精神は「社会に学び、社会に貢献する技術者の育成」だ。グローバル化が進む現代における人材育成の目標は「世界に学び、世界に貢献するグローバル理工学人材の育成」である。創立100周年を迎える2027年には、アジア工科系大学トップ10入りを目指し、工科系大学のプレゼンスを高めることを目標に掲げている。

今「高等教育の質保証」が叫ばれている。大学が何を教えたかではなく、大学教育によって学生が「何を学んだか」が重要だ。学生の学びの心に火をつけ、学生が自ら学ぶことが非常に大切だ。

グローバル社会を担う理工系学生の育成を目的として、大学、企業、政府機関が連携して運営するGTIコンソーシアムを設立している。プロジェクトに参加すると、学生の意識が変わる。その証左が海外派遣学生数の急増だ。本学は国内5位。産学連携は、学生の意識を変えるよいツールだ。

超IT社会を生き抜くために

成蹊大学学長 北川 浩氏

現在、「コラボ教育」をベースとした大学改革を進めている。文理融合型の教育に大学全体で取り組んでいる。

人工知能(AI)関連技術の進化で形成される超スマート社会における人間の仕事は、スマートテクノロジー4.0(ST4)を「創る」「使いこなす」「無関係」に分けられる。「環境×IT(情報技術)」「法務×IT」「金融×IT」など、あらゆることがST4と関係し、「無関係」な領域は次第に縮小していく。

人間はST4が苦手な領域の仕事を担うことになるだろう。求められるのは「総合的思考」「創造的思考」「真のコミュニケーション」「倫理観」「課題発見」「チーム力」だ。

文明が調和的に前進するためには、エネルギーと材料の発展も不可欠だ。本学のサステナビリティ教育研究センターで、企業の社会的責任(CSR)部門と連携しながら、持続可能社会の実現という視点から研究・教育活動を進めていきたい。

人々が望む未来社会を考える

東京工業大学学長 益 一哉氏

技術を生み出し、世の中に貢献することが工業大学の使命だ。これまでに実用化された本学の研究には、磁性材料のフェライトの発明、水晶振動子の開発、面発光レーザ、透明酸化物半導体「IGZO」を使った薄膜トランジスタ開発などがある。

長期目標は「世界最高の理工系総合大学」であり、東工大モデルとして「世界に飛翔(ひしょう)する気概と人間力を備え、科学技術を俯瞰(ふかん)できる優れた人材の輩出」だ。

学士課程の新入生がトップクラスの科学者から最先端研究を学ぶ講義、リーダーシップ教育院による国際的な大学院教育、学生のための国際交流拠点、21世紀社会をけん引する真のリーダー育成を目指すリベラルアーツ研究教育院など、教育環境を整えている。

未来社会DESIGN機構を10月に創設した。これは「人々が望む未来社会とは何か」を学内外の多様な構成員と東工大の教職員・学生・卒業生が一緒になって考えデザインしていくための組織だ。

最先端を創造する人材育成

東北大学総長 大野 英男氏

建学の理念である「研究第一」「門戸開放」「実学尊重」を基盤に、教育・研究・社会連携の好循環を実現すべく取り組んでいる。「大変革へ挑戦し、最先端を創造する人材の育成」を目指している。

そのための柱は3つ。まず、「研究第一」の理念に立脚すること。世界トップクラスの研究を行う大学にしかできない教育がある。

次に学生の挑戦心を受け止め、伸ばす教育を行うこと。学生本来の力を発揮できるようにしたい。

3つ目は、専門分野を横断すること。予測不能な世界で広い視野をもって活躍できる人材を育成したいと考えている。

新時代の実践教育として取り組んでいるのは、「グローバルマインドセット」「AI・データスキル」「アントレプレナーシップ」を身につける教育だ。

シェアタイプの「国際混住型学生寄宿舎」「国際共同大学院プログラム」、世界最高水準の教育力と研究力を備えた「卓越大学院プログラム」など時代に即した教育の整備を進めている。

新たな学びの場「未来の教室」

ボストン コンサルティング グループ パートナー 丹羽 恵久氏

これまでに例を見ない急速な技術革新が世界経済に大きな影響を与えている。

変化の中で世界が求める人材のポイントは、「技術も含めた幅広い知見・知識を持つこと」「それら知見・知識を適切に活用できること」「自ら変革・改革を起こせること」の3つだ。課題を設定し、自身の知見・知識を使って変革を実行する力を持つ人材が求められている。

だが、日本の教育の現状は「学びが教科・学科の壁を越えていない」「平等主義で自ら変革・改革を起こせるとがった人材を輩出しにくい」「大学・学校教育と社会人教育が分断されている」という状況だ。

これらを変革するために必要なことは「文理融合・STEM教育の実施」「圧倒的な尖りのある人材の育成」「大人が学び直せる環境づくり」である。

経済産業省では「未来の教室」プロジェクトを進めているが、大学には、生涯を通じて学び続けられる場および産業クラスターの中核として人材を育成する場となることを期待している。

第2部 産学連携セッション

人生二毛作社会が到来――北川氏

多様性と寛容さが大事――益氏

ジョブ型就労で就活も変化――大野氏

国際交流・産学連携を推進――村上氏

多様な学びの提供が肝――丹羽氏

――第4次産業革命はどんな社会を生み出すのか。

北川 あらゆるものが「つながる」社会になる。例えばマイクロチップを応用し突然死を防ぐことも可能になる。一方、データがテロの標的になったり、個人情報が流出したりするなど管理が難しい社会でもある。法整備は不可欠だが、日本では取り組みが遅れている。

村上 AI社会でも人間の制御は必要だ。AIの役目はあくまでデータ抽出であって、危険性は判断できない。

 基礎研究と開発、ビジネスまでが一気に立ち上がる社会になるだろう。

大野 A I とロボットとの組み合わせは、地方の人手不足解消に役立つ。一方、AIには目的が組み込まれるため、公正性に注意する必要がある。

丹羽 AIの浸透により先進国の既存知識に基づく優位性は極小化する。知識を生かして貪欲に取り組めるかが勝負になる。

―― AI社会に必要な人材とは。

北川 テクノロジーの進化は高速化し、暗記は価値を持たない社会になる。「総合」と「創造」が基本になる。

村上 まずは基礎学力。データを基に論理的に考える能力も大事だ。

 多様性を認められる力と寛容さも大切だろう。

大野 核になる学問を身につけ、データ処理のツールを理解することも大事だ。

丹羽 自分の力を客観視し高められる人材だろう。

――理工系人材育成の各大学の取り組みを知りたい。

大野 学生の学ぶ意欲に応えるため、多様な文化を受け入れる「グローバルマインドセット」「AI・データスキル」「起業家精神(アントレプレナーシップ)」を身につける実践教育を展開している。

 産学連携、部局横断、専門分野を超えた大学院教育を進めている。

村上 教員の半数が企業出身で産学連携の意識は高い。産学連携は学生と企業側の双方に刺激を与える。

北川 丸の内ビジネス研修では各学部から選抜された学生が全学部混合でグループを作り、企業の課題に取り組んでいる。理工系学生が技術的提案を専門外の人にわかるように説明する能力がつくなどのメリットもある。

 「リベラルアーツ研究教育院」では多分野の一流人材による教育を行っている。

大野 研究に関して情報の価値を文系人材と共に考えるセンターを設置した。境界を超えた研究は学内の共通認識になっている。

村上 リベラルアーツは大事だが講義の他に社会との連携による学習が有効だ。

丹羽 学ぶ動機をどう作るかも大切だ。

――大学のグローバル化について聞きたい。

村上 海外に出る意義をいかに教えるかがポイントだ。外国人との交流で視野が広がることを伝え、留学する学生も急増している。

大野 国際混住型学生寄宿舎「ユニバーシティ・ハウス」で国際感覚育成に取り組んでいる。

――指定国立大学法人について知りたい。

 指定国立大学法人はブランドの一つと考えている。最大の利点は学外に直接出資できることだ。

――資金については。

丹羽 海外の大学は寄付金に支えられていることが多い。卒業生に生涯関わる機会を提供し寄付を増やしている。寄付控除の仕組みも日本と違う。

村上 大学の校友会などと緊密な関係を築くのは有効だ。私学への助成金増額は望めないため、今の収入内でやりくりする工夫が求められる。古い教育を変え、グローバル化など新しいことに資金を回せばいい。

北川 寄付は少ないのが現状で授業料と補助金が主だ。寄付は特定事項で集めるほうがよい。

――理工系人材の就活についてどう考えるか。

大野 今は過渡期だ。就活期間が集中していると地方大学の学生はまとめて動きやすい。今後は欧米のようなジョブ型就職も増え、選考方法も変わるだろう。

 産学連携は優秀な学生と出会う機会にもなる。1日だけの会社見学をインターンシップと呼ぶような風潮は改めるべきだ。数カ月いないと仕事は学べないし、今は対価も安すぎる。学生の能力をもっと評価してほしい。

北川 経済学者の立場からは新卒一括採用はやめるべきだと考えている。「採用市場」らしく仕事内容と待遇を明示して競争すべきだ。

村上 就活期間は長すぎると悪影響があるが、就活自体は人生経験になる。就職後のミスマッチを防ぐために産学連携、インターンシップは有効だ。就活ルールは崩壊しているのが実情だ。

丹羽 学生はキャリアプランを作り、会社側も役職ごとの仕事や役割を明確にする「ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)」を明示すべきだ。就職時期は多様化するだろう。

 ジョブ・ディスクリプションを開示することがグローバル時代には不可欠だ。

――社会人が大学で学び直す「リカレント教育」についてどう考えるか。

村上 生涯教育は重要だが、学位取得など目的が明確な分野を大学が担うべきだ。

北川 急激な高齢化により人生も二毛作になる。人生で2度大学に入ってもよいのではないか。

 産学連携を活用すれば企業の技術者も学び直せる。

大野 ジョブ型就職の場合、新たな部門へ移るためには学び直しが求められる。リカレント教育は、採用方法の変化ともリンクして盛んになるだろう。

丹羽 学びのあり方は多様化した。学ぶ機会を選べるような情報提供が求められる。

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