U22

【PR】大学の約束

AIやロボットは我々の仕事を本当に奪うのか? Special Lecture―― AI学者 松原仁 教授

2018/12/10

激しい変化の時代到来とともに予測される様々な社会課題。大学教授はどのような解決策を思い描いているのか。アカデミックな視点から、各社会課題への解決策を講義してもらう。

2時限目 >>> 人とAIの共存

AI学者 松原 仁 教授(公立はこだて未来大学 システム情報科学部 複雑系知能学科)

AIは研究段階からいよいよ社会実装へ

講師 AI学者 松原 仁 教授(公立はこだて未来大学 システム情報科学部 複雑系知能学科) 東京大学大学院情報工学専門博士課程修了。電子技術総合研究所で1990年代から将棋、囲碁、サッカーなどのゲームを通じた人工知能の研究に携わる。2000年より現職。2016年、人工知能を利用した配車システム開発の株式会社未来シェアの代表取締役社長就任

AIの研究には、科学的な側面と工学的な側面があります。科学的な側面とは、人間の知性の研究で、「人間とは何か」ということの探究です。これがAIの研究の原点といえるでしょう。一方、工学的とはAIの技術的な研究です。これまでは人間の経験や知識を大量に集めて機械に入力してきましたが、近年のディープラーニングではコンピュータが自ら新しいやり方を考える、といった大きな飛躍を遂げています。

AIの研究成果として、将棋の対局で活躍する「PONANZA」、囲碁で世界チャンピオンを破った「アルファ碁」といったゲームの世界での活躍が話題となっています。公立はこだて未来大学では、AIにとっていちばん創作が難しいといわれる小説を書く研究に挑んでいて、2016年に文学賞の「星新一賞(*)」に応募し、一次審査通過を果たしました。俳句を詠む「AI俳句」プロジェクトにも参加しています。俳句の先生には「まだまだひねりが足りないですね」と言われていますが(笑)。こういった研究は人間の創造性の研究につながっています。創造性は人間の知性の中で重要な役割を果たしていると考えられていますが、まだまだわからないことがたくさんある。ですからさまざまな分野で基礎研究が進められているのです。

こうして研究が重ねられてきたAIも、最近になってようやく実用の段階に入ってきました。例えば、今、私がかかわっているのはAIによる乗合い公共交通サービスの実用化です。タクシーやバスを効率よく配車して相乗りを可能にするシステムで、乗客がいない運行の無駄をなくし、相乗りによって運賃を下げ、より使いやすい交通手段を実現するというものです。北海道のような広い地域や過疎地域では、同じ方向へ向かう車に人やモノをまとめて乗せていけば効率的です。また、自家用車の代わりに乗りたいときに気軽に安くタクシーが利用できるようになれば、最近問題になっている高齢者の免許返上の問題解決にもつながっていくでしょう。実際に高齢化が深刻になる地方都市の自治体やタクシー会社からの問い合わせが増えています。まだ法律上の規制の問題はありますが、将来的には自動運転での運用も視野に入れた日本の新しい交通システムの実現を目指しています。

AIによって新しい「仕事」が生まれる

AIが身近に現れてくると、将来AIに仕事が奪われるかもしれない、何か予想もつかないことが起こるのではないか、と恐れを抱く人がいるかもしれません。AIは急に社会に現れた異分子ですから、不気味に思うのは当然です。わからないものが来たときに、とりあえず身構える、というのは人間の本能として自然な反応ですし、むしろ”すんなり受け入れられる”というほうが生物としてまずい(笑)。最初は敵かどうか警戒しなければ危ないですからね。

では本当に仕事が奪われるのか、というと、「奪う」ではなく「変わる」のだと思います。かつて英国で産業革命が起き、機織りが機械化されるなど、これまでの歴史でも短期的に起こってきたことと同じだと思うのです。電車の駅員さんも切符を切る仕事が自動化されたとき、駅員さんの仕事がなくなったと思われましたが、実際は改札での問い合わせ対応などの仕事で忙しく、仕事の内容が変わったけれど駅員という仕事がなくなったわけではありません。AIが社会のしくみに組み込まれた将来、AIと人間の協働作業が進むなかで、新しい仕事が生み出されていくのではないでしょうか。ただし、新しい仕事に対応するために、社会人は折々で新しい技術を学び続けることが必要になってくるでしょう。学生時代に学んだ知識でずっと仕事が続けられる時代ではなくなるわけです。

また、AIは人間が培ってきた技や専門性を後世に引き継ぐための技術としても期待されています。仕事を奪うのではなく、仕事をする人がいない分野を支えるということです。漁師や農家など後継者不足で絶えてしまう職業の知識をAIに覚えさせ、ロボットが仕事を引き継ぐのです。

少し前にデジタルネイティブという言葉があったように、これからは、AIネイティブと呼ばれる世代が生まれてくるでしょう。物心ついたときからAIという賢いパートナーがいることがあたりまえの社会で育つ人たちです。すでに棋士の藤井聡太さんは勉強道具としてAI将棋と対戦し、新しい戦術を自ら学び取っています。結果、素晴らしい成績を収めているのは周知のとおりです。

AIの発達によって2045年には人間の能力を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)を迎えるといわれています。シンギュラリティとは、AIコンピュータが人間の総合的な能力を超えるというものです。たしかに将棋や囲碁のように特定分野のAIは人間以上の成績を収めていますが、人間がもっているすべての知的能力を超えるには、まだまだ時間がかかるのではないかと思われます。しかしその時が来たとしても、根本的には人間に対してAIが致命的な悪は為さないと楽観視しています。なぜならAIは人間の争いの元となるお金、土地、食料、資源といったものに興味をもつことはないと考えられ、利害関係にならないからです。AIは所詮人間が作った道具にすぎません。いかに使いこなすかが常に求められるのです。

*星新一賞:作家・星新一の「ショートショート」といわれる一連のSF小説にちなんだ、理系の発想から生まれる短編小説の文学賞。松原教授が率いるプロジェクトチームが人工知能で創作した作品『コンピュータが小説を書く日』が、2016年の第三回星新一賞で一次審査を通過し、話題となった。AIが小説を書くことに目覚めるというストーリー。

スタディサプリ 大学の約束 2018ー2019

全国国公立・私立50校の今と未来を徹底取材。
グローバルや研究や独自の教育の魅力について紹介します。
総力特集は「大人たちが見る大学ブランドランキング2018」
出版 : リクルート
価格 : 500円/ デジタル 120円 (税込み)

U22 新着記事

ALL CHANNEL