パラ卓球、ネットが遠い! 選手の感覚で奥深さ体験

パラ卓球選手の感覚を体験できる卓球台。左足の踏ん張りがきかない選手は左側が広く感じる(1月、東京都港区)
パラ卓球選手の感覚を体験できる卓球台。左足の踏ん張りがきかない選手は左側が広く感じる(1月、東京都港区)

東京パラリンピックを1年半後に控え、健常者には縁遠い存在だったパラスポーツが身近なものになってきた。ボッチャのスポーツとしての面白さにはまる人が急増し、5人制(ブラインド)サッカーの体験イベントも毎回盛況だ。パラ選手ならではの感覚を体感できる卓球台も作られるなど、「知る する はまる」パラスポーツの世界が広がっている。

特注の卓球台、半分だけ形変える

車いすの選手はネット際のボールがものすごく遠く感じるという(1月、東京都港区)

生まれつき手が短い選手は卓球台のどの場所も遠くて丸のように見え、障害で左足の踏ん張りがきかない選手は自陣の左側が広く感じる――。こうした日本代表選手の実感をもとに、ネットを挟んだ一方の形状だけを変えたユニークな卓球台が昨年秋に誕生した。

「座っていることで、ネット際のボールがものすごく遠く感じる」。車いすでプレーする茶田ゆきみ選手の声を反映した台は、一方の奥行きだけを通常の約1.3倍に伸ばした。1月下旬に東京都内で開かれたイベントでは、茶田選手と健常者がこの台でラリーを体験。大人の男性が前のめりになってもネット付近のボールに届かず、「通常の台と全然違う」と驚きの声が上がった。

過去の体験会では相手に車いすに座ってもらっていたという茶田選手は「この台なら自分の感じる遠さをより実感してもらえそう。パラ卓球の奥深さを知ってもらいたい」と笑顔を見せる。

日本肢体不自由者卓球協会などが昨夏、選手約20人に聞き取りを行い、障害を表現したデザインを作成。東京五輪の公式卓球台にも決まっている三英が無償協力し、オーダーメードで異なるデザインの3台を製造した。同社の三浦慎社長は「板が大きくなる分、安定性の確保に苦労したが、選手が感じている世界を再現できた」と振り返る。

一部の台は4月中旬から東京・渋谷区役所に展示され、来訪者が実際にボールを打って体験することもできるという。同協会の担当者は「パラ卓球選手が挑むプレーの難しさや面白さ、観戦の見どころが伝わると確信している。障害者と健常者の垣根を越えていけるきっかけになれば」と期待している。

(鱸正人)

ブラサカで学ぶコミュニケーション

ブラインドサッカーの体験会で、目隠ししたまま鈴の入ったボールを蹴る参加者(東京都千代田区)

アイマスクを着けると視界は暗闇に落ち、頼りになるのは周囲の人の声や手をたたく音だけ。日本ブラインドサッカー協会は5年前から一般向けに、コミュニケーションを学んでもらうための競技体験プログラム「OFF TIME(オフタイム)」を展開している。

1月末、東京・千代田のビルの会議室に、仕事終わりのサラリーマンや学生ら27人が集まった。全員が目隠しをして最初に取り組んだのは「1~6月生まれと、7~12月生まれの2つの班に分かれる」というお題。「私は4月!」など各自が発する声を頼りに、少しずつ輪が形成されていく。

しばらく7~12月のグループが点在したが、声を掛け合って合体し、数分で完成。指導役でブラインドサッカー日本代表の寺西一選手(28)が「声を出すだけでなく相手の声を聞く」「思いやりの気持ちを持って声を出す」とポイントを解説すると、参加者からは大きなため息が漏れた。