パラ卓球、ネットが遠い! 選手の感覚で奥深さ体験

約2時間のプログラムの終盤には目隠ししたまま、鈴の入ったブラインドサッカーボールを蹴る体験も実施。参加した会社員の関根牧子さん(45)は「相手をどう安心させるか、コミュニケーションのコツを学べた」。団体職員の荘司健雄さん(37)は「競技の難易度の高さがよく分かった。実際に生で見てみたい」と目を輝かせた。

同プログラムは2014年から実施。18年3月までに182回、約2500人が参加した。社員研修に導入する企業も増え、日本代表戦の集客アップにもつながっている。寺西さんは「実際に体験すれば、見えなかった時に何を感じたか、観戦時に自分自身に重ねて見てもらえる。競技を広める動きにつながる」と効果を強調する。

(堀部遙)

ボッチャの企業対抗戦相次ぐ

終業後に会議室で練習するNECボッチャ部(川崎市)

1月末の夕方、JR武蔵小杉駅近くにあるNEC玉川事業場(川崎市)のオフィスビル16階。会議室が集まるフロアで普段聞かない歓声が響く。

「チョーうまい!」

「すごい、球と球の間に入ったよ。3得点、スーパーショット!」

興奮の源はパラスポーツのボッチャ。プレーするのはNECボッチャ部の社員らだ。月に2~3回、会社の施設などで練習を重ねている。健常者が出られる大会では昨年4月以降、8大会中6回優勝という、知る人ぞ知る強豪である。

東京商工会議所で開かれた企業対抗ボッチャ大会(18年12月、東京・千代田区)

創設は2017年4月。きっかけは16年リオデジャネイロ・パラリンピックで日本代表が銀メダルを獲得したこと。同社東京オリンピック・パラリンピック推進本部の荻野智史さん(33)が「面白そうだからやってみたい」とつてをたどって道具を借り、同僚らと社内でプレーした。

すると「思ったよりも奥が深い。1エンドに投げる球は6つだが、5・7・5の俳句のように、少ない手駒で無限に表現できる」(荻野さん)と魅せられ、部活として会社の公認を得た。グループ会社にも輪を広げ、現在部員は28人いる。

田村和秀さん(50)もはまった一人。「早めに出社して始業前に練習し、昼休みも練習。帰宅後もマンションの共用スペースで投げている」とボッチャ漬けの日々で、今やエースに。

ボッチャは白の目標球に近づけた球の数を競うカーリングに似た競技。革製の球さえあればどこでも誰でもプレーできるのが特長だ。リオでの活躍で一気に名が知られ、健常者もできる共生スポーツの象徴として一大ブームが起きている。スポーツ用品販売のナガセケンコー(東京都)によると、ボッチャ用具の売り上げは「リオ前の数十倍」で昨年は注文をさばききれず、入荷待ちになった。

東京パラへの機運を盛り上げるツールとして経済界も注目する。東京商工会議所は昨年12月に第1回企業対抗ボッチャ大会を開催。経団連などでつくるオリ・パラ等経済界協議会も「オフィス・デ・ボッチャ」と題した大会を2年前からスタートさせた。

大学でも、障害者福祉を専攻する学生を中心にプレーする人が増えている。杏林大学には4月に公認団体としてボッチャ部ができる。部長になる栗原玄伎さん(19)は「一手で逆転できるスポーツはあまりなく、面白い」と熱く語る。

日本ボッチャ協会がブームを一過性のものに終わらせまいと始めたのが「東京カップ」だ。健常者と日本代表が同じ土俵で戦う大会で3月に3回目を開く。一般からの参加希望が増えた今回は予選を実施した。

実は代表強化の一環でもある。「健常者の球の置き方には面白い発想があって、代表の戦術に反映させたことがある。特に小学生のプレーが一番勉強になる」と日本代表の村上光輝監督。

裾野が広がれば、山の頂点は高くなる。健常者の一投が、東京パラでの日本の金メダル獲得を後押しするかもしれない。

(摂待卓)

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