セブンイレブンの本部が東京都内の店舗から灰皿を撤去する方針を打ち出したことで、これまで店頭の空きスペースを喫煙場所として提供してきたオーナーが頭を抱えている。喫煙規制が広がるなか、「最後のオアシス」存続を求める客と板挟みになっているためだ。2020年東京五輪をきっかけに規制は飲食店など屋内にも及ぶが、喫煙の受け皿は見つかっていない。
都内のセブンイレブンで灰皿のある店が最も多い地域の一つ、立川市内の店舗を訪ねた。建物と歩道の間にある20平方メートルほどのスペースには、真冬でも早朝から深夜まで紫煙が絶えない。
「懇意にしているお客さん何人かに聞いてみたんです。そうしたら、絶対に残してほしいと言われて……」。店舗のオーナーは弱り切った表情を浮かべる。「市のルールに違反しているわけではないので、灰皿をなくしても吸う人はいるはず。吸い殻のポイ捨てを防ぐためにも、当面残すつもりです」
本部への苦情、4倍に急増
都内にあるセブンイレブン約2700店のうち灰皿があるのは約1000店。本部は18年11月上旬からオーナーに撤去の方針を伝え始めたが、12月の時点で3割が態度を保留している。
フランチャイズチェーン(FC)のコンビニエンスストアで、店舗は本部から独立した存在だ。本部の方針とはいえ、従うかどうかは店舗が決められる。ただ、そのなかでもセブンは本部の方針が徹底していることで知られており、3割という数値は異例の高さといえる。
店頭に灰皿を残すかどうかが、なぜこれほど議論になるのか。実際にたばこを吸っている人たちに聞いてみると、「ほかに吸うところがない」3つの事情が浮かび上がってきた。
1つ目は、自治体の間で広がった路上喫煙の規制だ。立川市も08年から、立川駅など主要な駅周辺を全面禁止にした。それ以外の地域では立ち止まっての喫煙は可能だが「吸い殻を捨てる場所がないし、周囲の人の目も気になる」(50歳代の男性)のが実情だ。
規制は家庭にも及ぶ。「子供がいるので自宅では絶対に吸わないことにしている」と、ある30歳代の女性は話す。本人は知らなかったが、東京都が18年に施行した条例では、自宅であっても子供がいる部屋で喫煙してはならないと定めている。
だめ押しとなったのが、公衆喫煙所の廃止だ。かつて立川市は立川駅周辺に4カ所設けていたが、市民からの苦情を理由に一斉に撤去した。その結果、「通勤・通学の途中に必ず喫煙所で一服していた」という人たちの行き場がなくなり、コンビニの店頭に流れてきている。