賃上げは物価上昇考慮し評価 ぬか喜びで散財しない物価上昇をマネーハック(2)

そう考えるとプラス回答ならお祭り騒ぎという状況ではなくなります。「昨年の物価上昇をキャッチアップする」のが春季交渉の大事なテーマですし、「今年の物価上昇も織り込めるなら織り込んでおく」くらいの気持ちを持ち続ける必要があります。

もちろん、60歳代前半の処遇改善、65歳以降の雇用確保、非正規社員の正社員転換、あるいは残業抑制や有給休暇が取得しやすい職場改革なども実質的な賃上げに通じる大事なテーマです。在宅勤務などの働き方改革も重要なテーマになるでしょう。

そしてもう一つ、これからの労働組合の交渉課題になり得る大切なテーマがあります。「退職金水準の引き上げ」です。

かつて高度成長の時代、初任給が毎年にように上がったのは景気がよかったというだけでなく、そもそも高いインフレが生じていたいからです。その頃は賃上げと同様に退職金水準の引き上げも大きな交渉テーマでした。労働組合にはこちらも忘れず頑張ってほしいと思います。

家計は合理的かつ現実的な考え方で管理

会社員個人の目線で考えてみます。私たちは数十年なかったインフレのステージにこれから入りつつあるのかもしれないという意識をそろそろ持ち始めておく必要があります。

それはつまり、「賃上げが実現したからといってむやみに財布のひもを緩めて散財してはいけない」ということです。決してぬか喜びしてはいけません。

「やあ、毎月の給与が5000円上がった。さて、家賃が5000円高い部屋に引っ越ししよう」とか「月5000円増えたのだから、毎月服をもう1着買っても大丈夫」というような発想は禁物です。

むしろ、「ベースアップが3000円あったということは同じ生活をしていても物価が上がって3000円は多く必要になるかも」と考える発想が重要です。

あるいは「ベースアップの3000円以上物価が上がっていたらむしろ足りないかもしれない。しっかり家計を引き締め、モノの値段に注目しておこう」というような視点がマネーハックでは求められるのです。

マクロ経済の観点では、賃上げに喜んだ個人が消費を旺盛にすることが重要かもしれません。しかし、家計は個人の合理的かつ現実的な考え方で管理されるべきです。

「物価上昇との見合い」を意識しつつ、ぜひ今年の賃上げ交渉を見守ってみてください。

マネーハックとは ハックは「術」の意味で、「マネー」と「ライフハック」を合わせた造語。ライフハックはIT(情報技術)スキルを使って仕事を効率よくこなすちょっとしたコツを指し、2004年に米国のテクニカルライターが考案した言葉とされる。マネーハックはライフハックの手法を、マネーの世界に応用して人生を豊かにしようというノウハウや知恵のこと。
山崎俊輔
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「共働き夫婦 お金の教科書」(プレジデント社)など。http://financialwisdom.jp
近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし
近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし