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問い続ける人の思考法

創造力解き放つ環境求めて 元バンカー起業家の探究心 quod 共同代表の飯塚洋史氏(下)

2019/2/10

石川 米国の社会学者、レイ・オルデンバーグ氏が提唱した「サードプレイス」という言葉とも関連しますね。家が第一、職場や学校が第二、その中間にあって個人としてくつろげる「第三の場所」のことです。コーヒーチェーン大手の米スターバックスがコンセプトとして掲げたことで広く知られるようになりました。

■集中できる「第三の場所」が必要

石川善樹氏(左)と飯塚洋史氏

それぞれの場所でやり取りされる情報をみると、家では安心や安全に関わることが中心です。職場や学校は目的がはっきりしており、上司と部下、先生と生徒など立場も固定されているので、流通する情報も限定的になりやすい。つまり新しいことが生まれにくい。だから企業には様々な人材を集め、フラットな組織をつくる必要があるのですね。

飯塚 東京を例にとると、第一の場所である家は電車で1時間前後の郊外に多く、第二の職場はおおむね山手線の内側に固まっています。第三の場所が多いのはその中間、地名でいえば三軒茶屋や下北沢、代々木上原、最近は日本橋や清澄白河も当てはまるでしょうか。クリエーターと呼ばれる人たちがこうした場所に住むのも、効率よく質の良い情報を集めたいからだと思います。

石川 かつてのパリがそういう場所だったんでしょうね。日本でも明治や大正期の文豪はよく温泉地に集まっていました。昼間は議論して、インスピレーションを得られたらすぐ旅館にこもって執筆できるというメリットがあったのかもしれません。ところで、飯塚さんは今の会社でも創造性を発揮しやすい環境づくりに取り組んでいるそうですね。

飯塚 はい。一つは空き家や銭湯、飲食店などを活用し、街全体で宿の機能を提供する事業です。東京のゲストハウスの会社が手掛ける事業をお手伝いしています。宿泊者が歩き回り、街の人や宿泊者同士で交流する中から面白いアイデアやビジネスの種が生まれることを期待しています。

もう一つはメガネのJINSが運営するワークスペース「Think Lab(シンクラボ)」。同社が2017年12月に開設した「世界一集中できる場を目指し、進化し続けるワークスペース」の事業企画や運営に携わっています。どうすれば集中力をより高め、深く思考できる空間になるか、試行錯誤しています。「Think Lab」自体を他の企業の本社などに設置する事業も始めており、大企業でも導入例が増えています。

石川 quodは各地の事業家とクリエーター、ナレッジワーカーを結び付ける事業も展開しています。様々な観点から、創造力を解き放つ場を提供する。いわば、大きなカフェのオーナーになろうとしているわけですね。今後の事業にも期待しています。

飯塚洋史
1984年神奈川県生まれ。東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻修了。日本政策投資銀行に入行後、M&A(合併・買収)アドバイザリー業務、投融資業務に従事するとともに、持続可能な不動産の評価・認証制度の運用などに携わる。2017年に合同会社quodを設立し共同代表。
石川善樹
1981年広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業後、ハーバード大学公衆衛生大学院修了、自治医科大学で博士(医学)取得。「人がよりよく生きる(Well-being)とは何か」をテーマに企業や大学と学際的な研究を行う。専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学など。

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