マネー研究所

カリスマの直言

企業統治改革、形だけでは株価浮揚しない(藤田勉) 一橋大学大学院特任教授

2019/2/11

欧米では敵対的TOBは一般的な財務戦略である。世界最大のM&A(合併・買収)は英国の通信企業ボーダフォン・エアタッチが00年にドイツのマンネスマンを買収したものであり(20兆円強)、これは敵対的TOBであった。現在ではボーダフォンの利益の約30%をドイツが占めており、ボーダフォンの成長に大きく貢献した。同様に、日本を代表するグローバル企業である伊藤忠が欧米では一般的な財務戦略を実行することは当然である。

もう一つの例がオリンパスだ。大株主であるバリューアクト・キャピタルの幹部を社外取締役会として受け入れた。米国の大手アクティビストファンドであるバリューアクトは「物言う株主」としてマイクロソフトの経営改革をもたらした実績を持つ。これがオリンパスの経営改革の触媒になることが期待される。

■株主主権への移行により日本株は浮揚

欧米では敵対的買収やアクティビズム(物言う株主が企業に経営改革を迫ること)が一般的に行われており、これらによって能力の低い経営者や存在意義の薄れた企業が淘汰されることがある。例えば、アクティビストによって、米ゼネラル・エレクトリックのCEOはその座を追われ、米ヤフーは事実上解体された。また、デュポンとダウ・ケミカルは経営統合し、化学業界の再編が進んだ。今やアクティビストファンドは経営改革の触媒として欠かせない存在である。

日本では「資本の論理」というとネガティブな響きがある。しかし、資本主義経済において資本の論理を十分に追求してこなかったからこそ、現在の日本企業と日本株の不振があるのではないか。日本株を本格浮揚させるためにも資本の論理を重視し、形式重視から株主主権のガバナンス改革に移行することが期待される。

藤田勉
一橋大学大学院経営管理研究科特任教授、シティグループ証券顧問、一橋大学大学院フィンテック研究フォーラム代表。経済産業省企業価値研究会委員、内閣官房経済部市場動向研究会委員、慶応義塾大学講師、シティグループ証券取締役副会長などを歴任。2010年まで日経ヴェリタスアナリストランキング日本株ストラテジスト部門5年連続1位。一橋大学大学院修了、博士(経営法)。1960年生まれ。

マネー研究所 新着記事

ALL CHANNEL