マー君の通訳が語る 一流メジャーリーガーの気配り術ヤンキース・田中将大投手の通訳 堀江慎吾さん

追い風も吹いていた。ちょうどイチロー選手がメジャーで大活躍し始め、他の日本人選手も次々と米国に渡った時期だった。日本人メジャーリーガーにインタビューする機会が増え、「自分の描いていた夢に近い仕事ができ、とてもうれしかった」と堀江さんは振り返る。

2008年に拠点をニューヨークに移してからは、ヤンキースの松井秀喜選手にインタビューしたり、NHKのメジャーリーグ中継の映像を制作する仕事をしたりするなど、野球とのかかわりがますます深まった。

田中投手、メジャーの中でもプロ意識高い

一流選手には一流のビジネスパーソンと共通する部分がある

2014年が明けて間もないころ、突然、ヤンキースから連絡が来た。入団が決まった田中投手の通訳を探しているので、選考面接を受けてみないかという誘いだった。プロの通訳としての経験はゼロだったが、バイリンガルであることと野球に詳しいことが決め手となり、球団の専属通訳として採用が決まった。「ヤンキースから声が掛かった時は非常にうれしかった。選手の通訳というのは、スポーツの現場に一番近いところというか、むしろ現場そのもの。とても魅力的だった」

今年、田中投手と共に、ヤンキースで6年目のシーズンを迎える。

入団1、2年目と比べると、田中投手もだいぶ英語力が上達したというが、監督やコーチの指示、ミーティングの内容などを正確に理解する必要がある場合は、今でも必ず通訳するようにしているという。もちろん、記者会見の通訳もするし、通訳だけでなく、時にはキャッチボールの相手もする。球場内では影のように寄り添う存在だ。

そんな堀江さんは、田中投手のことを「非常にプロ意識が高い」と評する。例えば、「試合前のキャッチボールでも、1球ごとに自分のフォームを確認しながら、狙ったところにビシッと投げる。常に試合での投球をシミュレーションしながら真剣に練習に取り組んでいる。メジャーでも全員がそうやって練習しているわけではない」と話す。

田中投手のプロ意識の高さをうかがわせるもう一つのエピソードは、体調管理のため、シーズン中はほとんど酒を飲まないことだ。「遠征先で一緒に食事に行く時も、田中投手はせいぜいビールをグラスで1杯程度。遠征先にチームの専用機で移動する時は機内でお酒も出ますが、それにも田中投手は手を付けません。非常にストイックです」

また、堀江さんは、メジャーの球団でもとくにスター選手の多いヤンキースで様々な選手と接する中で、一般のビジネス社会にも共通するような一流選手の特徴を発見したという。一つは、田中投手に見るような高いプロフェッショナリズム。もう一つは、気配りとコミュニケーション能力の高さだ。

今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
注目記事
次のページ
新人王が他の選手のグローブを温める
今こそ始める学び特集