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外国人労働者受け入れ拡大 日本の変化を考察する4冊

2019/2/25

キャベツを収穫するインドネシアからの技能実習生

外国人労働者の受け入れを拡大する新制度が4月からスタートする。政府は「移民政策ではない」と強調するが、不透明な要素もある。経済や社会にどんな影響が出るのか。

大阪市立大学教授の高橋信弘編著『グローバル化の光と影』(2018年11月、晃洋書房)は、グローバル化の波が押し寄せる日本では、経済、経営、働き方がどのように変化してきたかを他国の例も交えて解説した本。東南アジア出身の介護人材の現状、外国人のホワイトカラーを採用した日本企業の事例、韓国の「雇用許可制」、欧州の移民政策を取り上げた章があり、外国人労働者や移民問題を考える材料になる。高橋氏は「単にグローバル化の影響を考察するだけでなく、過去の問題には本来どう対応すればよかったのか、現在の問題には今後どう対応すればよいのか、という観点から論じている」と説明する。

米国には、移民の影響を分析した研究や著作の蓄積がある。米テキサス工科大学教授のベンジャミン・パウエル編『移民の経済学』(16年11月、藪下史郎監訳、東洋経済新報社)によると、「移民は各国の制度を少しずつ改善し、世界の所得を増加させる」。移民の経済効果だけに注目する論者を批判するジョージ・ボージャス米ハーバード・ケネディスクール教授は『移民の政治経済学』(18年1月、岩本正明訳、白水社)で、移民は米国の国内総生産(GDP)を増やすが、移民以外の米国人が得る利益(移民余剰)は小さいとの試算を示す。「移民をロボットのような労働者ではなく、生身の人間と見るより広い視点に立つと、重要なことが分かってくる」

日本でも徐々に研究が進みつつある。東京大学教授の川口大司編『日本の労働市場』(17年11月、有斐閣)は、労働経済学の研究成果を概説する書で、「移民・外国人労働者のインパクト」の章では、ボージャス氏らの論文を引用しながら米国と日本での論点を整理している。「大半の政府統計には外国人を識別できる調査項目がない」日本では長く事例研究や質問票を使った研究が中心だったが、定量分析も増えてきたという。外国人労働者を多面的にとらえる研究や著作は地に足の付いた議論の土台となり、「開国か鎖国か」といった極論に対する歯止めにもなる。

(編集委員 前田裕之)

グローバル化の光と影

著者 : 高橋 信弘
出版 : 晃洋書房
価格 : 2,808円 (税込み)

移民の政治経済学

著者 : ジョージ・ボージャス
出版 : 白水社
価格 : 2,376円 (税込み)

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