宮藤さんの脚本で「生きてる!」って実感 橋本愛

日経エンタテインメント!

『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』 若き日の志ん生・美濃部孝蔵を森山未來(左)、人力車夫の清さんを峯田和伸(中央)が演じる。橋本愛(右)が演じる小梅の髪型はカツラではなく、地毛がベースという(日曜20時/NHK総合)

個性が際立ったキャラクターの群像劇は、『いだてん』の大きな魅力の1つとなる。

「宮藤さんは普通の人を、普通じゃない面白さを持つ人のように書く力がすごい。主人公のお2人は功績のある人たちですが、歴史上の(重々しい)偉人ではないし、失敗も多くて、『本当にすごい人なの?』って思うくらい、滑稽なんですよね。そこが愛しいです。

私が演じている小梅が出てくる『浅草パート』は、遊びが効いたシーンで。峯田さん演じる清さんや、森山さん演じる孝ちゃんと、好き勝手にやっている。言ってしまえば、本筋には深く関わらない役回りなんですけど、『生きてる!』って実感しながら演じられていて、とても楽しいです。人の気持ちよりちゃんと自分を優先する3人が、ケンカしたり罵り合いながらも、なぜか切れない友情でつながっているのも尊いなって。しかもお2人とも俳優として特別。峯田さんのお芝居は歌みたいだし、森山さんは動物的。それを間近で見られるのも貴重な経験になっています。

小梅は物語が進むにつれて変化を見せますが、今撮影している物語前半の終盤は、第4形態ぐらいのイメージ。女性の強さを主張するわけではないですが、脚本に表現されているので、私がちゃんと受け取って、届けられたらいいなと思っています」

楽しく生きよう、が笑いにつながっている

要所にユーモアを効かせ、笑える作風であることが宮藤作品の特徴であり魅力だが、橋本は“社会派”と表現する。

「いろんな種類の問題やニュースがあるなかで、宮藤さんが今の世の中や社会に対して感じていることがユーモラスに、でもちゃんと提示されていると思います。先日、宮藤さんの舞台を見に行ったんですよ。『意味が分からない』ではなく、本当に『意味がない』笑いがふんだんで、たぶん凝縮したとしたら30分で終わるくらいの(笑)。ただそうやって笑ったりしているうちに、社会の断片が見えてくる構図に、いつもドキッとさせられるんです。

今回、コメディって“闇”みたいなものがないと、思い切り飛ばしてできないんだということにも気付きました。楽しく生きよう、というのが笑いにつながっているのだなと。一身に不幸を受け止めて、それを踏まえた上で笑いにしよう、みたいな心の機微を知れたのは大きかったです。脚本に直接書かれているわけではありませんが、小梅が背負っているものもあると感じています」

新しさが目を引く作品になりそうだが、伝統枠ならではの“大河ドラマらしさ”は引き継いでいる。

「セットがとても素晴らしくて、映らないところも全部作り込まれているのは、演じる側からするとすごく助かります。浅草のシーンでは十二階建ての凌雲閣が出てくるんです。上の高い部分はCGになりますが、入口の門のところの複雑な装飾が見事に再現されていて、『ここ、省かないんだ』って、感動しました。

私は『西郷どん』(18年)の出演が決まってから、『篤姫』(08年)や『おんな城主 直虎』(17年)を見たくらいで、大河ドラマには詳しくないけれど、史実を重んじるという意味では『いだてん』もポイントは外していないと思います。でも『こんなこと実際はやってないでしょ?』って思ってしまう部分もたくさんありますが(笑)。大河ドラマという枠とシステムを駆使して、新しいエンタテインメントを作っている感じです。私は、みなさんにすごく面白がってもらえるのではと期待しています」

(ライター 内藤悦子)

[日経エンタテインメント! 2019年2月号の記事を再構成]

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