スマホのメモ、AIとの橋渡しに
AIの活用は、様々な情報価値の掘り起こしにつながりそうだ。たとえば、「朝活」向けのマーケティングプランを練るのに、朝の通勤途上で書いたメモだけを抜き出してみるといった具合だ。須藤氏は「書き込んだ本人すら気づかなかったような価値や使い道をAIに提案してもらえる」。優秀な知恵袋のAIに能力を発揮してもらうには、手書きではまずいわけだ。
手書き派が主張するメリットは「思いついたら、すぐ書き留められる」「図や矢印などが自在に書けるので、メモを画像として生かしやすい」などだ。紙がスマホに勝る部分は確かにある。しかし、須藤氏は「スマホの使い勝手はかなり改善されてきた。ペン入力対応のスマホが増えてくれば、乗り換えのメリットのほうが大きくなる」とみる。いずれ乗り換えるなら、それまでの間に手書きしたメモのデジタル化という手間を省くためにも「もう乗り換えてよいタイミング」という。
会議中にスマホでメモをとるような場合、以前は周りの視線が気になることもあった。ただ、近ごろは「かなり当たり前の風景になったおかげで、書き込みやすくなった」。須藤氏は飲み会でも雑談中でも「ちょっと失礼」と断って、スマホでメモをとるという。
スマホメモといっても、とり方は基本的に手書きと変わらない。須藤氏がすすめるのは、「情報の要素をそぎ落としてしまわないこと」だ。たとえば、市場調査で見かけた他社の商品の価格を書き留める場合、「○○円、高い」とだけ残すのでなく、「びっくり」「○○円はきつい」「強気」といったエモーショナルな情報も書き込む。
メモの心得、「短く簡潔」よりも…
「自然な言葉を記録しよう」というのが須藤流だ。メモだからと、短く簡潔にまとめるのでなく、感嘆詞や疑問フレーズなどもそのまま書き込んでしまう方が、自分らしさが残る。須藤氏は「オリジナルなデータベースとして生かすには、他人とは違う自分だけの情報、つまり気持ちの部分を大事にしたい」と強調する。
そうした付随的な情報は、「AIに仕事を奪われるのか」という懸念がくすぶる今の時代に光る場面もありそうだ。他社製品を見た際に覚えた違和感や気づきのような数値化できない情報は、人間ならではの「センス」「肌感」「経験値」の集積であり、須藤氏は「AIに置き換えがきかない『自分価値』を引き出す手掛かりになる」とみる。