全国に1万2000件、目立つ東京の増加
厚生労働省の調査では納骨堂は全国で約1万2000件を数える。東京都は419件(17年度)と約10年で100件近く増えた。もともとは遺骨の一時預かりの施設だったが、今では墓のひとつとして定着したといえる。多くは室内にあり、屋内墓苑や堂内陵墓などと呼ばれることもある。扉付きでロッカーのようなスペースに骨つぼを入れる「ロッカー式」、上段に仏壇・下段に遺骨を納める「仏壇式」など、いくつか種類があるが、最近増えているのが「自動搬送式」と呼ばれるタイプだ。立体駐車場のように階下などから遺骨が自動的に運ばれてくる。この最新鋭の納骨堂が東京23区に相次いでできている。葬儀や墓関連のサイトを運営する鎌倉新書によれば、17年と18年はそれぞれ5件ずつ開業しており、多くても年2~3件だったそれ以前を上回った。
年間130万人以上が亡くなる多死社会の到来に加えて、都市部に住む人が郊外や遠方にある墓を生活拠点の近くに移す「改葬」も増えている。関係者からは「13年にオープンした両国の自動搬送式納骨堂が好立地などを理由にかなり売れた。その人気ぶりを見て計画したり、建設を始めたりした施設がこの1~2年で開業した」との声が聞こえる。自動搬送式は参拝スペースと遺骨の収蔵場所が分かれており、多く遺骨を収蔵できる。1カ所の規模は少なくとも4000~5000基、多ければ1万基を超える。単純に考えるなら、この2年間で5万以上の墓が新たに首都圏にできた計算だ。19年に入っても自動搬送式の開業は続いている。大都市部だけでなく、周辺地域にも広がる可能性がある。
お参り快適、掃除や草むしり不要
自動搬送式のシステムは各施設とも基本は一緒。参拝の際に専用のカードを指定の場所にかざすと遺骨を納めた「厨子」(ずし)と呼ばれる箱が自動的に参拝ブースに運ばれ、そこにある墓石の中央部分に配置される。1分ほどで準備ができる。終了後はスイッチを押せば、遺骨はもとの収蔵場所に自動的に戻る。施設は冷暖房が完備されているので暑さ寒さに関わらず快適にお参りできる。多くがバリアフリー構造で車いすでの参拝も可能だ。あらかじめ生花やお香が供えられており、掃除や草むしりの必要もない。