遺骨が目前に運ばれる ハイテク納骨堂、都市部で人気終活見聞録(15)

2019/2/15

一口に「墓」と言っても、多様化して選択肢が増えた。中でもここ数年注目を集めているのが「納骨堂」と「樹木葬の墓」だ。墓の新規購入でみると、一般墓の比率が下がる一方で、この2つの割合が増えている。遠方からの墓の引っ越しや生前に自分や夫婦の墓を購入したいというニーズにも応える。近年、納骨堂は「自動搬送式」と呼ばれるハイテクな施設が都市部に相次ぎ、一方の樹木葬は従来のイメージとは異なるタイプが増えた。それぞれの新しいトレンドを追った。まずは最新鋭の納骨堂から――

納骨堂の様々なチラシ。一昨年ぐらいから増えた

住宅街や人気の観光エリアにも

「東向島 たから陵苑」は2019年1月に開業した最新の納骨堂だ。東武鉄道・東向島駅から徒歩3分。住宅街の真ん中にある。外壁に瓦を張った3階建ての建物は落ち着いた雰囲気。受け付けで手続きをしてエレベーターに乗り、参拝スペースのある3階で降りると明るい空間が広がっていた。「オープン3日間で170組が訪れた。順調な滑り出し」と販売を担当するメモリーブ(東京都中央区)の担当者は話す。近隣だけでなく、千葉・埼玉県から見学者がやってくる。選びやすいように価格は90万円のワンプライスにしたという。セールスポイントはペット(犬猫)も納骨できる点。プラス10万円で飼い主と同じように遺骨を納めることができる。

2019年にオープンした「東向島 たから陵苑」。事業主体は真言宗寺院の宝徳院

東京都内の散策の名所として知られる「谷根千エリア」に昨年オープンしたのは「上野さくら浄苑」。地蔵信仰の寺として知られる天台宗の寺院・浄名院の境内にあり、京王電鉄が初めて手掛けた納骨堂だ。僧侶が居住する庫裏(くり)があった場所につくったが、その際に住職の田中良和さんがこだわったのは「周辺の環境との調和」。寺院らしい和の風合いを生かした低層(2階建て)のつくりが特徴だ。散策がてら訪れる人も多い。参拝室へ向かうエレベーターを降りると壁面に約5000体の奉納地蔵が並び、厳粛な気持ちになる。その左右に7つずつ計14の参拝室が並ぶ。価格は78万円と90万円の2タイプある。

寺院らしいら和の風合いを備えた「上野さくら浄苑」。4500基を収容する
たくさんの地蔵尊が並ぶ奉納壇。見学ツアーでも多くの人が足を止めた=鎌倉新書提供

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