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米国とメキシコの国境 今そこにある「壁」

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/2/10

ナショナルジオグラフィック日本版

高地の砂漠に建設された壁。米国カリフォルニア州ジャカンバとメキシコ、ハクメを隔てている(PHOTOGRAPH BY JAMES WHITLOW DELANO)

トランプ米大統領は2018年12月、米国とメキシコの国境につくる壁の建設費用として、議会に50億ドル(約5600億円)の予算計上を求め、議会は紛糾している。16年の大統領選以前から、国境の一部にはすでに壁が存在していた。2016年春の壁を、ジェイムズ・ウィットロー・デラーノ氏の写真で紹介しよう。

◇  ◇  ◇

2016年春、国境の数カ所を訪ねた。厳重に警備され、国境を越えようとする車が長い列をなす場所や、土と木だけが2つの国を隔てているようなところだ。

トランプ大統領が壁を建設しようとしているメキシコとの国境は全長3200キロメートル余りに及ぶ。国境地帯は地質的には多様で、場所によっては大規模な建造物に適さない地形もある。トランプ大統領は壁の高さや厚さについての発言が少ないが、工学の専門家やメディアは計画の実現可能性を疑問視している。

国境の米国側に建設された2重の壁。壁の向こうにあるティフアナ川を通ってやって来る不法入国者の前途に立ちはだかる(PHOTOGRAPH BY JAMES WHITLOW DELANO)

確かに過去には、国境に部分的な壁をつくることで、組織的な密輸や不法入国を阻止できた例もある。カリフォルニア州サンディエゴのメキシコとの国境付近にある「スマグラーズ・ガルチ(密輸人の渓谷)」の壁は全長約5.6キロメートルで、総工費6000万ドルの土木プロジェクトの一部として建設された。

しかし、こんなこともあった。2015年の4月、米国境警備隊は、麻薬密輸業者がメキシコから運びこんだ重さ30キロ以上のアンフェタミンを押収した。このとき、密輸業者は、カリフォルニア州カレキシコとメキシコ、メヒカリの間に建設された国境の壁を避けるため、新たな密輸ルートを作っていたことがわかった。密輸業者たちはトンネルを掘ったのだ。

「密輸人の渓谷」からさらに東のカリフォルニア州ジャカンバでも、1990年代半ばに、密輸や不法入国を防ぐための壁が建設された。

米国境警備隊のSUVに乗り、カリフォルニア州から眺めたメキシコ。壁の向こうに見えるのは、テカテビールとカルタブランカビールで有名なテカテの街だ。国境地帯ではよくある光景だが、メキシコ側は都市が国境近くまで迫り、米国側は見渡す限り荒野が広がっている(PHOTOGRAPH BY JAMES WHITLOW DELANO)

トランプ大統領が壁をつくろうとしている国境はさらに東西へ遠く広がる。

写真を撮影したジェイムズ・ウィットロー・デラーノ氏は、撮影後、壁をつくるだけでは問題の解決にならないと話している。

(文 Daniel Stone、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2018年12月13日付記事を再構成]

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