週末レシピ 平成デザートの女王・ティラミスが簡単に
1990年代のバブル期に大流行し、確固たる地位を築き上げた「ティラミス」。今や、日本で最もポピュラーなスイーツの一つとしても過言ではない。イタリアンレストランだけではなく、ファミリーレストランやコンビニエンスストアにもあり、身近な存在だ。
では「作ったことがあるか」と尋ねれば、イエスの回答は多くないだろう。しかし、そう難しいモノではない。菓子作りにかかせない正確な計量や、オーブンを使わなくても、本格的なティラミスが作れるのだ。今回は、平成の最後に当たり、平成デザートの女王ともいえるティラミス作りに挑戦する。
マスカルポーネチーズ 150グラム / クリームチーズ 100グラム / 生クリーム 1
カップ/ レモン汁 大さじ2 / 卵 3個 / 砂糖 1カップ / コーヒー 1カップ / リキュール(ラム酒など)適宜 / フィンガービスケット 適量 / ココアパウダー 適量
ティラミスで重要な材料は、マスカルポーネチーズ、フィンガービスケット(サヴォイアルディ)、エスプレッソコーヒーである。
日本の「カルボナーラスパゲティ」は、生クリームをたっぷり使用したクリーミーな味わい。しかし、本国イタリアでのソースは、チーズと卵黄のみで濃厚に仕上げ、生クリームが入った時点で正式な「カルボナーラ」とは呼べない。「ティラミス」も、本来はクリームチーズや生クリームを使わず、マスカルポーネと卵でクリームを作るのが決まりごと。しかし、マスカルポーネだけではかなり高価になってしまうので、ここではクリームチーズも加えている。
(1)コーヒーに砂糖大さじ1と、リキュールの半量を合せる
(2)型にフィンガービスケットを敷き、(1)を染み込ませる
イタリアで使用されているフィンガービスケットは、サヴォイアルディと言い、スポンジケーキとクッキーの中間のような口触り。スポンジなどで代用すると、本格的なティラミスの食感とは異なってしまう。
サヴォイアルディが手に入らない場合は、スーパーなどで手軽に入手できるフィンガービスケットでよい。それも見つけられなければ、スポンジケーキではなくカステラや甘食でもよいだろう。
エスプレッソマシンをお持ちの方は少ないだろうから、インスタントコーヒーを通常の10倍ほどの濃さに溶いて代用する。
(1)卵黄に残りの砂糖半量を加え、もったりとするように混ぜる
(2)2種類のチーズにレモン汁と残りのリキュールを加え、(1)を合わせる
(3)生クリームを軽く泡立てる
(4)卵白と残りの砂糖でメレンゲを作る
(5)(2)のボウルに、(3)と(4)を加えて混ぜ合わせる
(6)<下準備>(2)に(5)を流し、ココアパウダーをふるってできあがり
型は、プラスチックの保存容器やバットなどでも可。深さがある場合は、ビスケットとクリームを2層に重ねよう。
生クリームの泡立てる際の注意点として、時間がかかると油っぽく口当たりが悪くなることが挙げられる。氷水などで冷やしながら素早く泡立てるとよい。卵黄についても、手動の場合は、湯煎などで人肌程度に温めながら泡立てると手早く仕上がる。
イタリアのティラミスは日本よりもトロッとしてなめらか。レストランでの食事の最後に、デザートとして皿に盛られて提供される。
日本では、持ち運びなどの点も考慮し、かなり硬めに作られている。イタリアンファミレスのデザートとしても知られているメニューでは、冷凍庫でしっかりと固めたアイスティラミスが有名だ。次は、ティラミス風アイスケーキの作り方を紹介する。
サワークリーム 50グラム / アイスクリーム カップ1(バニラ、もしくはチーズ味)/ 粉チーズ大さじ2 / 卵黄 1個 / 砂糖 大さじ3 / レモン汁 大さじ1 / コーヒー 適量 / カステラ または甘食 適量 / ココアパウダー 適量
(1)型にカステラを敷き、コーヒーシロップを染み込ませる
(2)サワークリーム、アイスクリーム、粉チーズ、レモン汁を合わせ、もったりと混ぜた卵黄と砂糖を加える
(3)(1)と(2)を交互に重ね、最後にココアパウダーをふるう。冷凍庫で固めてできあがり
北イタリア発祥のデザートとされているティラミスは、基本のティラミスで紹介したような材料で作るのが一般的だ。しかし最近、ローマでもフルーツを使用した、フレーバーティラミスも登場しているようだ。好みで、フルーツなどをトッピングしてもよい。
イタリアやフランスで、普通のコーヒーとは「エスプレッソ」を指す。ドリップコーヒー用の半分くらいの小さなカップに、6分目くらいの量で提供されるのがイタリア式。エスプレッソは苦いし、量は少ないし、コスパが悪いドリンクだと思っている日本人も少なくない。「ドリンク」と考えている時点で少し違うのかもしれない。
イタリアのカフェに相当する「バール」でエスプレッソを注文したなら、角砂糖などを落とし、混ぜずに一気に飲み干す。底にたまった砂糖をスプーンですくってなめる。これが粋なのだ。
バブル時代には「イタ飯」がはやり、それに伴ってティラミス人気も沸騰した。当時、イケてるとされた男女は夜な夜なイタ飯店で食事をし、デザートにティラミスを食べ、最後はエスプレッソでシメるのが、ナウいとされていた。
イタリア料理もティラミスもエスプレッソも、平成の世で定着し、年号が代わった後もすたれることはないだろう。来週はバレンタインデーだ。今年は平成を振り返りながら、ティラミスを作り、「ナウい」バレンタインデーを過ごしてはいかがだろうか。
(世界料理探究家 T.O.ジャスミン)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。