こんにちは、精神科医・産業医の奥田弘美です。さて皆様の心と体はお元気でしょうか? 今回も前回「置かれた場で生き抜く 宇喜多秀家に学ぶ環境適応術」に引き続き、ストレスフルな時代を生き抜いた戦国時代の武将を深掘りしながら、彼らのメンタル力について探ってみたいと思います。

前回は備前国の大名の殿様として生まれながらも関ケ原の戦いで一夜にして敗軍の将となった宇喜多秀家を取り上げ、彼の環境適応能力の高さについて考察しました。秀家は逃亡の果てに八丈島に流刑されるという過酷な運命に耐えながらも、84歳という天寿を見事に全うしました。詳しくは前回の記事「置かれた場で生き抜く 宇喜多秀家に学ぶ環境適応術」をご覧ください。
さて、今回はストレスに大きく影響する「周囲からのサポート力」について、黒田官兵衛に登場してもらいながら、あれこれ考察してみたいと思います。なお史実で明らかになっていない部分については、筆者の想像が多分に入っておりますが、「まあそういう解釈もできるだろう」と寛大な心でお楽しみいただければと思います。
ストレス緩和の鍵は「周囲からのサポート力」
ところで話はガラッと変わりますが、2015年12月から義務化(常時50人以上の労働者のいる事業所の場合、50人未満の事業所は努力義務)されたストレスチェックテストでは、大きく分けて「ストレス反応」(心身に出ている症状)、「ストレス要因」(仕事上のストレスの原因)、「周囲のサポート状況」の3項目を総合的に判断して個人のストレス度を判定します[注1]。
このうち「周囲のサポート状況」は、表1にあるような質問によって、「上司からのサポート」「同僚(部下を含む)からのサポート」「家族・友人からのサポート」の3つに分けて判定されます。
これら3つのサポートが良好であればあるほど、ストレスを緩和する力が高くなります。もし職場の「ストレス要因」の内容や程度が同じ人が2人いるとしたら、「周囲のサポート状況」が良好な人の方が、おそらく心身の「ストレス反応」も出にくくなり、総合的なストレス度も低くなる可能性が高いと考えられます。
言い換えますと、上司や同僚、家族との関係性が良くサポートをたくさん得ている人ほど、ストレスは緩和され、ストレスに対する耐性が高くなるということです。また、上司・同僚・家族の3つの領域から強力なサポートが潤沢に得られれば得られるほど、アイデアや行動力といった心のエネルギーも湧きやすくなっていきます。
周りのサポートを引き出す官兵衛の人間力
さて筆者は、戦国時代の武将の中でこの3つのサポート力を見事に活用していたのは、黒田官兵衛(1546~1604年)ではないかと考えています。
[注1]国が推奨している「職業性ストレス簡易調査票」で検査した場合