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シャンパンにも「ゼロ」 温暖化でブドウの糖度アップ

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缶チューハイや缶ビールの世界では「(糖質)ゼロ」という言葉を耳にするようになって久しいが、スパークリングワインの王者シャンパンの世界でも近年「ゼロ」と称されるジャンルの酒に注目が集まっている。「ドザージュ・ゼロ」と呼ばれるものだ。

シャンパンは通常のワイン(スティルワイン)とは異なり、醸造工程の最後にショ糖をワインに溶かしたものなど「門出のリキュール」を添加してから打栓をする。この加糖によって、超辛口から甘口までそれぞれのワインのスタイルが決定づけられるというわけだ。

ちなみにシャンパンは瓶内で2次発酵させることで知られていて、先の作業より前、瓶詰の際にも酵母と共に加糖をする。これはスタイルを決めるのではなく、新たなアルコールや炭酸ガスを発生させ、きめ細やかな泡をワインに溶け込ませるものだ。

さて、「ドザージュ」と呼ばれるスタイル決めの作業に使われる糖分の量は、最も甘口の「ドゥー」で1リットル当たり50グラム以上。そして長らく一番の辛口は「エクストラ・ブリュット」(同0~6グラム)と呼ばれるスタイルだった。ところが、最近全くドザージュを行わない「ドザージュ・ゼロ」(ブリュット・ナチュールなどとも呼ばれる)というスタイルのワインが徐々に増えているのだ。

背景にあるのは、地球の温暖化だ。

シャンパンの製造で知られるフランス北部シャンパーニュ地方は北緯48~49.5度と北海道より北に位置している。ブドウの糖度が上がりにくい冷涼で厳しい気候の地域だ。ところが、温暖化によりブドウの品質が変わり果実の糖度が上昇、ドザージュせずとも各メゾン(シャンパーニュ地方ではシャンパンの生産者をこう呼ぶ)が求めるワインのスタイルを作れるようになったというわけ。

「伝統的には9月半ばころにブドウを収穫するのですが、温暖化で前倒しになる傾向にあります。例えば、2018年はビッグビンテージ(当たり年)になるだろうと言われた年ですが、成熟が早く進み異例の8月中の収穫でした」とシャンパーニュ委員会日本事務局の笹本由香里さんは説明する。

ドザージュ・ゼロのシャンパンが増え始めている理由は、ほかにもある。ほかの国々で作られるスパークリングワインとの差別化を図るためだ。「シャンパーニュには他国にはないこの土地ならではのテロワール(土壌などブドウを育てる環境)があります。世代交代で造り手が若返る中、ドザージュをしないことでそこに表れる自然のままのテロワールを表現したいと考えるメゾンが増えているのでしょう」(笹本さん)。

人の手を加えない、ブドウそのものの自然な味わいを求める傾向は消費者側にもある。毎年11月伊勢丹新宿店で開催されるシャンパンに特化した催事「ノエル・ア・ラ・モード」は最新トレンドを反映した注目イベントだが、ここでもドザージュ・ゼロに人気が出ているという。

エコであることやサステナブルな製品への関心が高まる時代の流れの中、ブドウそのものの自然な味わいを楽しみたい客が増えているのだ。先日ふらりと入った家電量販店のワインコーナーにも「最先端」のドザージュ・ゼロのシャンパンが並んでいたのには驚いた。

一昔前まではシャンパンは乾杯の酒というイメージで、赤白ワインに比べこだわりを持つ人が少なかったが、今や日本は世界でも有数のシャンパン輸入国。2017年には、輸入総数・金額共に世界第3位に躍り出た。居酒屋でもグラス売りシャンパンを提供する店が珍しくなくなった今、スタイルによる味わいの違いを楽しむ人が増えているのだろう。

そうした中、先の「ノエル・ア・ラ・モード」に2017年に初めて登場。話題を呼んでいるシャンパンがある。ローラン・ルカールというメゾンによるムニエ種100パーセントのワインだ。

シャンパンに使用できるブドウは決まっていて、ほとんどが黒ブドウであるピノノワールとムニエ、白ブドウのシャルドネの3種から造られる。3種すべてをブレンドしたものから1つの品種のみを使ったものまで様々だが、日本ではこれまでムニエのみを使ったシャンパンはあまり知られていなかった。

「ムニエは熟成が早く、シャルドネやピノノワールのように長期熟成に向かない代わりに果実味やまろやかさをもたらすと言われます。ムニエをセパージュ・ノーブル(上質ワインを造るブドウの品種)と考えず、これを用いないことをよしとするメゾンもある中、ある有名メゾンは昔から、ムニエを加えることの意義を語り注目を集めていました」とはシャンパーニュ委員会日本事務局代表の川村玲子さん。

小規模メゾンであるローラン・ルカールの畑はこの地方の西側に位置するバレ・ド・ラ・マルヌにある。ムニエが多く栽培される地域で同メゾンの畑に植えられているのも8割はこの品種だ。

シャルドネやピノノワールのみを使ったシャンパンはよく知られているが、ムニエならではの良さはそうした品種に比べ知られていなかったからだろうか。イベントに訪れた客からは「ムニエ100パーセントなのにこんなにおいしい」といった声がよく聞かれたそうだ。「2年目の出店となった2018年には、リピートしてくださるお客様も多かった」(輸入元のエイアン・インターナショナル社長、堀容子さん)と言い、ムニエのみを使ったシャンパンを取りそろえた7日間のイベント期間中330本が売れたという。

一方、「こんなシャンパンが欲しい」と自ら造ってしまった人もいる。ワインのインポーターであるワイナリー和泉屋社長、新井治彦さんだ。

新井さんが造ったのは和食に合うシャンパン。自社輸入のシャンパンを手がけたいとメゾンを探す中で出合った小規模メゾン、アルベール・ルヴァスールに依頼して造ったものだ。

「僕はフレンチが苦手で、外食というともっぱら和食、それもすし屋なんです。でも和食は砂糖を使う料理で甘いでしょ。すし屋に行くと大抵超辛口のシャンパンが置いてあるんですが合わないなと思っていた。それで、和食にも合うシャンパンを造ってみたいと思ったんです」(新井さん)。

目指したのは、和食ならば料理を選ばず合うシャンパン。特にシャンパンが好きな人なら別だろうが、通常は、一品一品に合わせてワインを変えるような飲み方はしないからだ。

「僕のためにドザージュを変えたシャンパンを造るなんて面倒なことはやってくれないと思ったら、快く引き受けてくれた。まず、試作品として造ってもらったのは、糖分が15、17、20、25グラムという4種類のワインでした」(新井さん)。これに、同メゾンの「ブリュット」(9グラム)と「ドゥミ・セック」(34グラム)を含めた6種類のシャンパンを5人の専門家を交え試飲。「和食に一番合うこと」をテーマに選んでもらったところ、なんと新井さんを含めた6人全員が「17グラムがベストマッチ」で一致したという。

「わずかな差に見えますが、17と15グラム、17と20グラムは全然違うんです。20グラムだとドザージュの量が多すぎて料理を選ぶなと感じたり……。アルベール・ルヴァスールはうまみを感じるワインの造り手で、これに心地よい甘みが加わってアン肝から焼き魚までなんでも合うシャンパンになりました」(新井さん)。都内の有名すし店などでもよく出ているという。

新井さんが造ったシャンパンを飲んでみた。これまでに飲んだシャンパンは、最も一般的なブリュット(1リットルあたりの糖分12グラム以下)以下のドザージュのものが多かったため、実はかなり甘さが際立つのかなと想像していた。ところが、ほどよい酸もありながらまろやかな味わい、想像していたような甘さはない。黄色みの強いきれいな色合いで目にも楽しい。「心休まるワイン」と新井さんが言っていたが、その言葉の通りだ。目の前にしていたのはパック寿司や煮物など普通の家庭の和食だったが、特にベッタラ漬けとの相性が最高。これをツマミにずっと飲んでいられそうだった。

最後に取材の中で聞いたお薦めシャンパンを一つご紹介しよう。1851年創業の歴史あるメゾン、シャルル・エドシックの「ブリュット レゼルヴ」だ。

年によってワインの出来が大きく異なるスティルワインとは異なり、シャンパンは品質を一定に保つため、ブドウの出来が特にいい年以外は複数年の「リザーブワイン」(過去に造られたワイン)をブレンドする。通常は全体の12~15パーセント程度、5年以下の熟成の若いワインがブレンドされるというが、「ブリュット レゼルヴ」では平均10年の熟成を経たリザーブワインを40パーセントも使用している。2007年から造り始めたこのシャンパンは大成功、人気を集めている。

通常の2倍以上もリザーブワインをブレンドできた理由は、実は過去の販売不振にある。1990~2000年代にかけ同社は販売量が落ち込んでいたのだ。同メゾンは自社畑を持つほか、多くのブドウを栽培農家から買い付けているメーカーだ。ところがこの時期もブドウの購入量は変えなかったため、リザーブワインが大量に保管されていた。そこでこれを気前よくブレンドしたシャンパンを考え出したというわけだ。

「寝かせたワインを多くブレンドしているのだからおいしくないわけがない」とはあるワイン関係者。同メゾンは、リザーブワインの比率を高めたスタイルの商品を継続するため、質の高いブドウ農家との新しい契約も視野に入れているという。

スパークリングワインの世界でゆるぎない王者だったシャンパンも、各国のメーカーがこのジャンルの酒に力を入れ始めると共に切磋琢磨(せっさたくま)している。「同じ泡のお酒なら安いスパークリングで十分」と言わず、たまにはシャンパンを手にしてみたい。ワインの世界がぐっと広がるはずだ。

(フリーライター メレンダ千春)

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