社名を検討している段階で北川氏が着目したのは、「脱サラ」というキーワードだ。もし、営業先で「末沢社長は脱サラして起業し、塩作りをしている」と伝われば、「一般的な塩とは違う、きっと特別なものを作っているはずだ。どんな塩なのか」と知りたくなると考えたのだ。そこで北川氏が提案した社名が、「脱サラファクトリー」だった。末沢社長は「北川さんの狙いは理解できた。しかし、想像を超えたネーミングだったので、採用するかどうか1週間くらい悩んだ」と言う。

解決策:意味を限定しないマーク

「自凝雫塩(おのころしずくしお)」という商品名は、淡路島に伝わる神話を基に北川氏が考案した。古事記や日本書紀には国生みの神様が大海原をかき回し、矛から滴り落ちた潮の滴が固まり「自凝(おのころ)島」ができたと記されており、最初に生まれた島が淡路島とも伝えられている。

1kg入りの「自凝雫塩」。楽天やアマゾンなどオンラインショップでも販売している

その神話と、海水のみで塩作りをする末沢社長の話を基に、北川氏はキャラクターのようなマークをデザインした。モチーフは神様だが、あえて特定のイメージに限定していない。滴のようにも、勾玉(まがたま)のようにも、鳥のくちばしなどにも見えるのが特徴だ。「最新の認知科学では、イメージを1つに限定せず、いくつか意味があるほうが記憶に残りやすいといわれている。アップルのマークも、リンゴが欠けていると捉えるとネガティブな印象だが、アダムとイブの物語にひも付けると人類創生というチャレンジングでポジティブなイメージになる。何だろうと思わせる『分かりにくさ』もマークには必要だ」(北川氏)。課題の一つであったブランディングの費用に関しては、経営戦略を見直すだけでなく、成功報酬型のロイヤルティーを支払う契約を結ぶことで初期投資を抑えたという。

北川氏は、GRAPHがブランディングを手掛ける京乃晴れ姿などに自凝雫塩を紹介。採用された商品のパッケージには、自凝雫塩のマークを入れている

(ライター 西山薫)

[日経クロストレンド 2019年1月16日の記事を再構成]

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