USB PDにQi… 難解な充電機能をスッキリ理解
充電方法は、デジタル機器とともに進化を遂げている。一方で充電に関する規格が増えるなど、難解な部分も多い。これだけは押さえておきたい充電の注目キーワードを解説する。
1つめのキーワードは「USB PD(Power Delivery)」。採用が増えているUSBタイプCを利用した充電規格になる。パソコンでは、USB PD非対応のタイプC端子もあるため、端子の横に稲妻マークなどを記して区別するのが一般的だ。両者の違いは、供給できる電力。従来のUSBの電圧は通常5Vだが、USB PDは9Vや12V、20Vも利用可能。電流はUSBタイプCが最大3Aまでのところ、USB PDは最大5Aまで対応する。結果、20V/5Aという100Wまで出力できる。100Wというとちょっとした家電なども動かせてしまう電力だ。
iPhoneもUSB PDに対応
「レッツノートSV」や「ラヴィノートモバイルNM」シリーズなど、携帯ノートを中心にUSB PD対応の製品が増えてきた。加えて、最近はスマートフォン(スマホ)のUSB PD対応も進んでいる。iPhoneでは、2017年に発売したXと8/8 PlusからUSB PDに対応済み。アンドロイドでも、18年10月に発売したグーグルの「ピクセル3」をはじめ、国内では根強い人気の「エクスペリアXZ3」もUSB PDに対応する。スマホが急速充電を進める背景には、内蔵バッテリーの容量が増えている現状がある。従来の充電方法だと時間がかかるため、充電時間短縮のためにUSB PDを選択しているように見受けられる。
USB PD対応の機器が増加するのに呼応して、充電器やモバイルバッテリー側のUSB PD対応も加速。こちらの場合は、製品によって30Wや18Wなど最大出力に違いがある。購入前には、充電する機器側が何Wまでの充電に対応しているかを調べる必要が出てきそうだ[注]。
[注]iPhoneは最大18W、高性能タブレットの「iPad Pro」は最大30Wで充電できる
またUSB PDには、電源供給のほかに映像出力やデータ転送も1本のケーブルでできるという特徴を持ち合わせる。実際の接続例を見れば一目瞭然だ。下の写真はUSB PD対応の液晶ディスプレーとノートパソコンを接続したところ。液晶ディスプレーはコンセントから電力供給を受けている。その液晶ディスプレーとパソコンをタイプCケーブルでつなげば、パソコンへの電力供給、パソコンからの映像出力がケーブル1本で済んでしまう。
この例では、ノートパソコンのAC電源が不要になっただけだが、ケーブルの配線はスッキリした印象に。さらに外付けHDDなど、周辺機器のUSB PD対応が進めば、対応機器を数珠つなぎにして電力供給とデータ転送が可能になるため、配線はかなり少なくなるはずだ。
iPhoneの対応で再び脚光のワイヤレス充電
2つめのキーワードはワイヤレス充電の「Qi(チー)」。こちらもUSB PD同様、iPhoneが対応したことで再び注目を集めている充電規格だ。仕組みは、充電台内のコイルで電力を磁力に変え、端末内部のコイルで再び電力に変換してバッテリーを充電するというもの。
充電器メーカーなどを中心に、Qi対応の充電器が数多く発売されている。タイプは、充電パッドといえる平置き型と、動画などを視聴しながら充電できそうなスタンド型の2タイプ。このほか最近では、車載用のQiスタンドなども展開する。
Qiは規格拡張で最大15Wでの充電に対応したが、製品では大半のアンドロイドが最大10W、iPhoneが最大7.5Wまでとなっている。
3つめのキーワードはiPhoneの急速充電。アップルは独自に電流を2.4Aまで上げるという急速充電機能がある。注意したいのは、この急速充電を付属の充電器では使えないこと。付属の充電器は最大1Aまでの対応なので、別途2.4Aまでの出力に対応した充電器が必要だ。
一方で、前述のように1世代前の製品からUSB PDにも対応した。こちらはUSB PD対応の充電器だけでなく、タイプC(アップルはUSB-Cと呼称)とライトニングをつなぐ充電ケーブルも必要。ハードルはさらに高くなるが、USB PD充電では実測値で15Wを超える。体感レベルでもかなり高速だ。
iPhoneのUSB PD充電用のケーブルは、現状、純正品の一択。アマゾンで販売する低価格ケーブルも試してみたが、USB PDでの充電はできなかった。「安物買いの銭失い」にならないように注意してほしい。
[日経PC21 2019年3月号掲載記事を再構成]
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