「ハレ ガストロノミア」の八寸には「紅焙」をペアリング

もう1店は恵比寿にある「HaRe Gastronomia(ハレ ガストロノミア)」だ。都内の老舗イタリア料理店などで修業を重ね、料理長を歴任した高山直一氏が、日本の24節季を表したイノベーティブな料理を完全予約制で提供している。イタリアンのエッセンスも入れているが、日本の懐石料理がベースになっており、同店でのティーペアリングは日本茶しか使用しない。先付から始まる懐石のフルコースのみ(1万2000円、税別、ペアリング別料金)で、15皿前後を提供するうち2皿ごとに異なる日本茶をペアリングさせている。

完全予約制の「ハレ ガストロノミア」

日本茶のみと言っても非常にバラエティー豊かだ。コースの最初は玉露の冷茶からスタートし、食材の味わいに合わせていぶしたサバにはスモーキーな香りの熱い番茶、こってりしたブリや熟成和牛には甘くふくよかな茎ほうじ茶、最後のご飯と吸い物には香ばしい黒豆茶、と様々なお茶が登場する。

前菜の八寸は「パルミジャーノ・レッジャーノのクレーマと黒トリュフ」「フォアグラの西京漬 千枚漬けとあんぽ柿」「あん肝と奈良漬けの最中」など5品で構成。濃厚なチーズやフォアグラのような食材が多いため、芳醇(ほうじゅん)な風味が特徴の宮崎産「紅焙(べにほうじ)」茶を合わせる。チョコレートを思わせる香ばしさもある。

ペアリングは日本茶のみだが組み合わせは無限

「ノンアルコールを希望するお客さまが増えてきたのですが、アルコールフリーのワインやシャンパンだと、甘みが強すぎて日本料理がベースの僕の料理と合わないのです。しかし、日本茶はぴったりはまり、また日本茶だけでも茶葉の種類や製法、産地別に数え切れないほどの種類があり、無限のペアリングができます。さらに日本酒に冷酒、ぬるかん、熱かんがあるように、お茶は温度でも違う味わいが出せるのです」(高山氏)

ティーペアリングは体験すればするほど奥が深い。不思議なのは食事を終えた後、ワインとは別種の多幸感が得られることだ。家で緑茶や紅茶を何杯飲んでもこうはならない。やはり食のプロしか提供できないテクニックなのだろう。「ノンアルコールでヘルシー」という要素以上の良さを感じさせるティーペアリング。「アルコール抜きでフルコースなんて」と先入観があった人にも、興味を持って挑戦してみてほしい。

(フードライター 浅野陽子)

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