慌しい幕開けとなった2019年。18年末から続く波乱相場でも、優待名人・桐谷広人さんは、どんどん買い進めたという。

「株価が下がりましたね。でも悲観はしていませんよ。バーゲンセールをやってくれている、うれしいなと思って、どんどん買っています」と余裕の答えが返ってきた。優待・配当の総合利回り4%以上銘柄に投資するスタンスの桐谷さん。18年秋からの下落局面でも淡々と買い進めている。年末年始の急落で、含み損は拡大したが「『いい優待、いい配当』と思える水準で買っているので、まあ株価が下がってもじたばたしない。この低金利の時代、利回り4%以上なんていいんじゃないかと。そういう考えですから、全然悲観はしていません」とおおらかだ。

桐谷さんのおおらかさの陰には、過去の苦い経験がある。かつては信用取引で大きな痛手を被った桐谷さん。リーマン・ショック時には追い証(追加証拠金)に追われ、やむなく大型株を底値で売った経験もある。この経験から信用取引はやめ、現物株の、優待・配当株投資に専念。「今は信用取引をしていないから、株価が下がっても慌てることなく、優待・配当を受け取りながら株価が戻るのを待てばいいんです。株価がいつ戻るかなんて誰にも分かりません、我慢すればいいんです」
辛抱の過程で桐谷さんが思い出すことがある。1974年の「キンシャサの奇跡」と呼ばれる、ボクシングのモハメド・アリ対ジョージ・フォアマンの試合だ。試合前、アリはKO負けするとの見方が大勢。試合では、初回から強打を連発するフォアマン。一方のアリは、ロープにもたれて打ち続けられる。しかしアリはクリーンヒットを浴びないように注意しながらフォアマンが打ち疲れるのを待った。そして8ラウンドで鮮やかな逆転KO勝ちをした。
下げの嵐はいつかやむ
「フォアマンの強打は、暴落している株価。いつかは下げの嵐が止まるので、その時まで我慢。そして資金があれば下げを恐れず、安いところで少しずつ買う。アリ対フォアマン戦のシーンを思い浮かべながら、辛抱するんです」
この言葉の通り、桐谷さんはこれまでの売却益を元手に急落相場でも優待・配当株をコツコツと買い進めた。それらの銘柄は下表にあるもの。毎日、銘柄をチェックして「株価が安い、利回りが高い」と判断した銘柄ばかりだ。