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外務省の新人は半数が女性 働き方改革は必然

河野太郎外務大臣

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NIKKEI STYLE

外務省の働き方改革に取り組んでいる河野太郎外務大臣は、自民党や政府で行政改革に取り組んできた実績を持つ。外務省および霞が関の働き方改革はどう取り組むべきなのか、河野大臣に聞いた。

外務省の機能が維持できないという危機感

白河桃子さん(以下敬称略) 河野大臣は、現職に就かれる前、2015年に就任された行政改革・国家公務員制度担当大臣時代から霞が関の働き方改革に熱心に取り組まれてきた印象で、当時は私も「霞が関の働き方改革を加速するための懇談会」などでご一緒させていただきました。外務大臣になられてからも、外務省内の働き方改革に積極的に着手されているのでぜひお話をうかがいたいです。

河野太郎外務大臣(以下敬称略) まず、「今やらなきゃ将来的に外務省の機能が維持できない」という危機感がありますよね。特に外務省は女性の比率がとても高いんです。19年度に入ってくる職員の半数は女性ですし、総合職でも4割は女性。

白河 たしかに、語学力を生かしてキャリアを積むことを希望する女性は多いですよね。

河野 はい。もともと女性比率が高い職場だということに加え、外務省の実務というのは非常に専門性が高くて、経験を積んだ職員に辞められたら困るという切実な事情があります。特殊言語の採用は3~5年に1人くらいのペースなので、その1人に辞められてしまうと5年や10年ブランクが生じてしまい、ダイレクトに業務に影響が出てしまう。長く働いてもらわないと困りますし、お子さんを産んでも復帰していただく前提で人事を整えないと間に合いませんから。

白河 夫婦で海外赴任をどう乗り切るかという問題もありそうです。

河野 全職員のうち6割、3500人程度が海外で働いています。外務省内の職員同士の夫婦のどちらかが海外赴任となったときには、パートナーが休職できる「配偶者同行休業」という制度は以前からあります。私が大臣になってから始めた改革としては、途上国の在外公館で働く女性職員が衛生上の理由で一時帰国して日本で出産を希望した場合には、その渡航費を一部負担する制度をつくりました。

ただ、最近は女性に限らず男性も、介護を抱えたりと様々な事情で働く時間に制限が生じるケースが増えているわけで、外務省全体が今までのような働き方じゃいけないという危機感は非常に強く持っているんですよ。少し前に、「外務省は一部職員の月の残業時間が200時間を超えている」なんて私の発言が報道されましたけどね。

白河 はい、新聞記事で拝見しました。

河野 現実問題として、長時間労働の状況は相当あるわけです。外務省の場合は、時差のある海外とのやりとりでどうしても時間を使うという特殊事情はある。また、たとえば国会対応に時間がとられているという外部要因もある。その点は、立法府にも丁寧に危機感を説明して理解を得ながら、国会と霞が関が連動する形で働き方改革を進めないといけないなと思いますね。

白河 その危機感というのは、人材面での?

河野 そうです。いまだに内部にも「人はたくさん来るでしょう」と考える人間がいるんですが、「決してそうじゃないですよ」と話すんです。昔は優秀な人は官公庁を目指してくれたけれど、今はそんな簡単な話ではない。

白河 民間でも、採用戦略のために働き方改革をしていると明言する企業は多いですね。しかし国会対応など長時間労働を強いられる外部要因も大きいのが霞が関の働き方。具体的にどんな改革を進めてこられたのでしょうか?

河野 内部でできることからどんどん着手しています。一つは、外務大臣のロジ(後方支援)の簡素化。外務大臣が海外に出張するとなれば、これまでロジ要員として30人くらいが関与していたんですが、「そんなに必要ないだろう」と言って半分くらいに減らしました。30人が対応するということは、その間、30人分の普段の業務が滞るわけで、その周辺への波及も大きい。これを少しでも簡素化しようと考えて実行しました。昔は大臣が移動するためにエレベーター規制までしていたのを「少し待っていたら来るんだから」と廃止したり、「ホテルの部屋に入ったら、お茶も自分でいれるから」と言ったりね。

ペーパーレス化を目指したい

白河 非常に細かいことですが、それは大臣ご自身が「不要」とおっしゃらなければ省けない業務ですね。あと、分厚い「ロジブック」の廃止も話題になりました。

河野 ロジブックというのは、閣僚のために職員が作成する資料を束ねた冊子のことですが、数十ページになることもあったんですよね。しかも、内容が変更されるたびに作り直し、とじ直していた。これを冊子という形としては廃止して、必要に応じて必要な情報だけを都度配布するようにして。一部はペーパーレスにして、メールで送るだけの場合もありますね。

本当は、すべての会議や国会向けの資料もペーパーレス化するところまで目指せれば理想。使う紙は膨大ですし、それらをコピーして順番にホチキス留めして、役所から自民党本部まで台車を使ってエレベーターに載せて運ぶだけでも、相当の業務量でしょう。これをすべてPDFで一斉メールで送っちゃえば一瞬で終わるじゃないですか。

あと、経費精算なんかもね、コーポレートカードを導入して手続きを簡素化しました。在外公館の領事手数料はこれまでは現金しか扱えなかったんだけれど、クレジットカード決済ができるようにする。ビザについては紙で1枚ずつパスポートに貼らなければいけなかったものを電子ビザに変えるだけで、1日あたり数時間の業務は減るんですよ。会議運営の民間委託も検討中です。そういう日々の業務改善に直結することが大事だと、内部でできることはどんどんやっています。

危機感は他の大臣や国会とも共有したい

白河 国会対応も課題だけれど、内なる改革はスピード感を持って取り組むということですね。大臣が経費精算とか、そこまで細かい面を理解され、号令をかけていらっしゃることに驚いています。私は霞が関からも働き方改革関連の講演依頼をよくいただいてお話しするんですが、改革をはばむハードルとして皆さんがよくおっしゃるのが「『省ける仕事はない』と上から言われてしまう」と。やはりトップからの発信が重要なのだと思います。他の大臣にもぜひ河野大臣のようにリーダーシップをとっていただきたいところです。

河野 それはぜひ国民からの声として、メディアからも要請していただくのが一番ですが(笑)、危機感の共有はしていかないといけないと思いますね。先ほども申し上げたように各省だけでなく、業務に深く関わる立法府の議長や委員長、ひいては議員の一人ひとりまで理解いただけるように、丁寧な説明は必要です。他の大臣のことをとやかく言うつもりはありませんが、私の場合は、通ってきた道が行革でしたから、やるしかないという意志によるものですね。

白河 おっしゃるように、河野大臣はこれまでのご経験があるからこそ、改革を推し進められている面は大きいですよね。となれば、他の大臣が同じように改革を進めるには、どんな方法が有効だと思われますか?

河野 私の経験から申し上げると、公務員制度改革の担当大臣だった時には私が各省の大臣や役所に「こういう感じで変えていきましょう」と伝えるだけではなかなか進まず、最終的には、役所から若手のチームを出してもらってボトムアップ型でアイデアを出してもらうようにしましたね。それでうまくいくようになり、今の若手官僚の活性化にもつながっている面もある。最近では総務省の小林史明政務官も奮闘していらっしゃいますよね。だから、何も大臣自ら旗振り役とならずとも、政務の中から担当を決めて任せるというのも一つの方法だと思います。

白河 大臣の号令の下、事務方のトップ層がリーダーシップをとって動けるようにするということですね。

河野 すると、役所の現場からもいろいろ意見が出てくるはずなんですよ。普段から「これちょっとおかしいよね」「無駄だよね」と思っている業務の改善案はきっと誰もが持っている。その知恵を出し合えるきっかけをつくって、出てきた知恵をちゃんと拾うというのがトップの役割でしょうね。

「失敗ありき」でトライ&エラーの働き方改革

白河 霞が関の方たちから「うちの組織でも働き方改革の案は出るけれど、提言だけで実効性がないんだよね」という不満はよく聞くんです。実効性を高めるには、やはりトップの本気度が不可欠なのですね。ただ、気になるのは、今後河野大臣が外務省を去られることがあれば、改革は後退してしまうのでしょうか?

河野 そんなことはないと思いますよ。働き方改革というのは、現場で働く人たちがプラスを実感できるはずなので、一度良い方向に動き出せば逆戻りはしないのではないでしょうか。

白河 先ほど女性の職員の方と立ち話をしていたら、「省内の雰囲気が確実に前向きに変わってきている」とおっしゃっていたので希望が持てました。「霞が関全体で30代職員のモチベーションが最も低い」という人事院の調査結果をみたことがあります。全体調査をした後、30代のスコアが低いので、さらに30代だけの調査をするぐらいだったそうです。

河野 そうですか。30代というのはそれこそ国会対策にも追われて一番忙しい時期ですからね。

白河 モチベーション低下の要因は、「長時間労働で新しいチャレンジができない」「ワークライフバランスに不満」というものでした。ですから、トップが「働き方を変えていく」と明言することは、若い世代にとってのモチベーション維持にもつながるのではと思います。

河野 現場の管理職任せだと限界があるでしょうね。管理職からすると、「何か変えようとするとかえって現場の新しい仕事を増やして不満が出るんじゃないか」と考えるから「だったら黙っていよう」と静観することになる。トップ自ら「私の責任で改革を進めるから、やってほしい」と号令をかけないと動きづらいと思いますね。

あと、私が気をつけてきた点としてもう一つ、「失敗ありき」と最初に伝えています。つまり、改革にはトライ&エラーはつきものなのだから、一度試してやめることも込みでやっていこうと。じゃないと、「人数半減したのに、今までと同じクオリティーで」なんて無理。もちろん、メリハリはつけますけれど、よほど重要事項にかかわることでなければ「ボールを落としたっていい」と私が言うようにしています。

白河 「失敗してもいい」なんて、完璧を期する霞が関では聞いたことないです(笑)。挑戦できるように心理的安全も担保している。心理的な安全性は生産性の高い職場の条件ですから、素晴らしいですね。

河野 それで実際に失敗するのかというと、実はほとんどないんですよ。かえって頑張ってくれているのでしょう。責任をもって号令をかけ、現場の工夫に任せる。それが一番いいように思いますね。私自身も職員も、業務の無駄を省くことで、本来集中すべき外交にしっかり向き合える。これが最終的なゴールでしょう。

白河 確かに河野大臣になって外遊が増えている。それでも回るのは効率化でより外交に集中できる環境を作っているのですね。他の省庁でも課題はどんどん複雑になり仕事は増える。ここ数年で、霞が関の至る所で若手や女性たちが中心となったワーキンググループが、危機意識をもって立ち上がっています。ぜひそのエネルギーを結集して霞が関全体の働き方が変わっていくように期待しています。ありがとうございました。

あとがき:霞が関の働き方の問題は一般企業にも通じるところがあります。国会対応(顧客との関係)においてままならない長時間労働と、自分たちで改善できる長時間労働がある。どこの職場に聞いても「XX(外部)のせいでうちの業界は無理」というのですが、外部ではなく内部にも長時間労働の要因は必ずある。そこをつぶしていこうと、大臣というトップ自らまず号令をかけているわけです。ほかの省庁でも「長時間労働をなんとかしたい」「今のままではまずい」という機運は高まっているのですが、トップの号令は大事。ぜひほかの大臣も率先して旗を振っていただきたいですね。

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「『婚活』時代」(共著)、「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)。

(ライター 宮本恵理子)

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