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世界で人気の射撃、日本は規制の壁 まずビームで体験

2019/2/4 日本経済新聞 夕刊

射撃は海外では「精神のスポーツ」と呼ばれて人気だが…(写真はイメージ)

2020年東京五輪・パラリンピックを機に、射撃の競技団体などが競技人口拡大に取り組んでいる。欧米で人気のスポーツだが、日本では銃の所持自体が難しく、選手育成のハードルも高い。競技団体は選手を支える相談体制を整備。五輪会場がある自治体も子供向けの体験会を始めるなど、競技の魅力や安全性のPRに努めている。

2018年7月のある日。東京五輪で射撃競技の会場となる陸上自衛隊朝霞駐屯地(埼玉県新座市など)に、100人近い親子連れが集まった。射撃の楽しさを知ってもらおうと新座、朝霞、和光の3市が初めて合同で企画した射撃体験会だ。

ビームライフルを使った射撃体験会(2018年7月、埼玉・自衛隊朝霞駐屯地)

子供たちは所持許可が要らないビームライフルを使い、10メートル先の標的に光線を命中させる競技を模擬体験。五輪・パラリンピックに出場した選手らから競技の魅力について話を聞いた。新座市によると、来場者からは「射撃は近寄りがたいイメージだったが、楽しく安全なスポーツだと分かった」と好意的な反応が寄せられたという。

大会期間中、朝霞駐屯地には海外から多くの選手、愛好家が訪れることが予想される。同市オリンピック・パラリンピック推進室の担当者は「射撃競技と五輪をともに盛り上げるため、19年度は2倍近い回数を開催していきたい」と意気込む。

■銃の所持困難、競技の継続断念も

1992年バルセロナ五輪の射撃クレー・トラップで銀メダルを獲得した渡辺和三選手

海外では10代から活躍する選手も珍しくない射撃だが、日本の環境は異なる。銃刀法などの規定により、銃を持てるのは原則20歳(空気銃は18歳)以上。日本ライフル射撃協会の田村恒彦・副会長兼専務理事は厳格な規制に理解を示しつつも「世界一厳しい規制のもとで射撃選手を育成するのは容易ではない」と話す。

競技の継続にも難しさがある。10年以上クレー射撃を続ける東京都の男性会社員(44)は最近、不動産管理会社から「(自宅への)銃の持ち込みはお断りします」と通告を受けた。警察から管理会社に、男性の銃所持について確認する電話があったという。

住宅の契約書には「危険物は持ち込み禁止」と書かれていた。男性は競技用の銃で、許可を得ていることを説明したが認められず、銃は自宅から離れた銃砲店に預けることにした。

銃の所持には都道府県公安委員会の許可が必要で、許可を得る過程では職場や家族を含めて警察が調査する。規制の厳しさから「所持を断念する人は少なくない」(競技関係者)のが実態だ。

そこで、日本ライフル協会は大学の射撃部などで競技する学生選手の支援に乗り出している。2017年度で7327人の全会員のうち学生は約4千人。その7割超が進学や就職時に住まいなどが変わることで銃を所持できなくなり、競技をやめてしまうという。

同協会は選手らの相談にのったり、銃所持の継続に必要な手続きを手助けしたりして競技の継続を促していく考えだ。

■五輪の参加国数、陸上と水泳に次ぐ

五輪で行われる射撃競技にはクレー、ライフル、ピストルがあり全15種目。参加国・地域は花形競技の陸上、水泳に次ぐ規模とされ、世界では広く人気だ。精密さ、集中力が要求され「精神のスポーツ」とも呼ばれる。

クレー競技は散弾銃を使って秒速22~30メートルほどで飛ぶ素焼きの皿(クレー、直径11センチ)を撃ち落とす。鳥猟の練習から派生した。ライフル競技、ピストル競技は10~50メートル先の標的を狙い、できるだけ中心に弾を撃ち込み点数を競う。

選手生命は長く、40代、50代の有力選手も多い。1992年のバルセロナ五輪でクレー・トラップ競技銀メダルを獲得した故渡辺和三選手は当時44歳だった。日本勢はバルセロナ大会以降、射撃競技で表彰台に上っていない。

[日本経済新聞2019年1月28日付夕刊]

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