健康もポイントも歩いてゲット お得な歩数計アプリ
歩数計機能を持つスマートフォン(スマホ)やスマートウオッチの普及を背景に、歩数に応じて買い物時に利用できる割引やポイントを付与するサービスが増えている。企業の健康経営への機運が高まる中、歩くことで健康と割引の一挙両得を目指す利用者の心理を捉えたようだ。
目標歩数達成で飲み物チケット
「歩くだけでドリンクゲット!」。日本コカ・コーラが2018年4月末から展開するキャンペーン「Coke ON ウォーク」で同社は、こんなテーマを掲げ、参加者は300万人を超えた。
スマホのアプリに1週間の目標歩数を自分で設定し、達成されるとスタンプがたまる。スタンプが15枚になると1本分のドリンクチケットが得られ、自販機で入手できる。
アプリのダウンロードは既に1200万を超え、利用可能な自販機は全国に28万台。事業担当の遠藤充マネジャーは「アプリは30~50代の男性の利用者が多かったが、歩くだけという手軽さが受けて10~20代の女性も増えた」と語る。大半のユーザーの歩数は1日5000~6000歩という。
日常生活では人よりも歩くと自負する記者(26)も登録してみた。目標歩数は4段階あり、下限は1日5000歩、上限は1万2000歩だ。日ごろ8000歩ほど歩く記者は9000歩を選択。最初はより多く歩こうとの意識が強かったが、休日を1日挟むと週累計歩数が目標に満たない結果となった。
こうした歩数連動型サービスが目立ち始めた背景には、歩数計機能を持つスマホやスマートウオッチの普及がある。これによって歩数を意識しにくかった一般利用者の意識が変わり、「歩いた分褒美が出る」サービスが他分野でも産声を上げたわけだ。
FiNC(フィンク)テクノロジーズ(東京・千代田)が手がける健康管理アプリ「FiNC」は、スマホで記録される歩数や体重、食事、睡眠時間などのデータを、独自のAI(人工知能)が分析してアドバイスする。ダウンロード数は400万に上り、うち8割以上は女性という。
歩数に応じてたまるポイントは、同社の通販サイトで体組成計やヨガマットなどの健康関連商品の割引購入や交換に利用できる。
南野充則最高技術責任者(CTO)は「利用者として想定したのはあまり健康に関心がない大多数の人々。楽しく使い続けてもらうためお得感や個別の健康ニーズに沿った情報発信を考えた」と話す。競争意識を盛り上げるため、アプリ内の仮想空間で友達と競う、歩数と連動したゲームイベントなども開いていく。
一方、ドコモ・ヘルスケア(東京・渋谷)が16年に始めたアプリ「歩いておトク」は歩数に応じて世界旅行を仮想体験し、コンビニ店や通販サイトでの買い物などに使えるdポイントをためられる仕組みで、月額500円の健康支援サービス「dヘルスケア」の一部だ。1日約25万人が利用しているが、中心的な利用者は30~40代で、調査では半数以上が「利用後に歩数が増えた」との回答があったという。
6000歩ごとに設定される1ツアーをクリアするごとにプレゼントやポイントの入った箱を開けられる。健康経営を進める法人向けには歩数管理を活用して、社員が最も歩いた部署を競うイベントなどを提案した。
電力料金の割引も
電力料金が割り引かれるサービスもある。新電力のイーレックス・スパーク・マーケティング(東京・中央)がタニタヘルスリンク(同・文京)と組んで展開する家庭向け電力小売りサービス「あるく・おトク・でんき」は、活動量計の歩数に応じ電気料金を割引できるプランだ。
無料で渡されるタニタの活動量計を世帯でもっとも歩く1人に付けてデータを取る。割引額は世帯の電力使用量にもよるが、関東の4人家族で月400~499キロワット時と想定すると、1日平均5000歩以上で200円、8000歩以上なら400円分が割引となる。通常は半年で2000円のタニタの健康管理サービスを無料で利用できるのもお得感につながっているという。
厚生労働省の17年の調査によると、20~64歳の1日の歩数の平均値は男性が7636歩、女性が6657歩で、ここ10年あまり変化はない。一方、健康増進に向けて厚労省が掲げる目標は男性は9000歩、女性は8500歩と実態より高い。お得なサービスの浸透で歩行数も上向くかもしれない。
(企業報道部 小柳優太)
[日本経済新聞夕刊2019年1月26日付]
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