Q.バッテリーの寿命を延ばすことはできない?
前ページで解説したように、リチウムイオン電池は、充放電を繰り返すたびに、化学変化によって劣化する。これを「サイクル劣化」と呼ぶ。使わなくてもある程度は劣化し、これを「保存劣化」と呼ぶ。
保存劣化はバッテリーの充電量が100%や逆に0%の状態では進みが速い。さらに高温も大敵だ。モバイルバッテリーなどを手掛けるアンカー・ジャパンでは、約27度を超えると劣化が始まると警告する。

以上を踏まえて、下図のような対策で寿命を延ばせる。ノートパソコンやスマホの一部では「いたわり充電」などと呼ばれる、満充電の手前で止めたり、満充電の状態が短くなる機能が盛り込まれている。
とはいえ、バッテリーをいたわりすぎて使いにくくなっては本末転倒。必要な場合は100%充電をためらわず、0%まで使い切ってよい。これがバッテリー本来の用途だ。
高温対策も重要。温度が上がりがちな自動車の車内に放置しないのは当然だが、暖房器具の前を避けるなど置き場所にも気を配りたい。ノートパソコンの場合は通気口を塞がないのが鉄則。さらに、ソファや布団の上は熱がこもりやすいので要注意だ。キーボード面からも放熱するので書類などを置いて妨げないようにしたい。
スマホの場合、フルセグの視聴や3Dのゲームなど負荷が高い作業では、発熱が目立つ機種もある。同時に充電するとスマホがさらに熱くなってしまうので、温度が気になったら負荷の高い作業か、充電のどちらか一方を止めるのがお勧めだ。

Q.バッテリー駆動時間が当てにならない
バッテリーで動作するのはノートパソコンやスマホに限らず、ゲーム機やブルートゥースイヤホンなど幅広い。大半の製品はバッテリー駆動時間が公表されているが、一部を除いてメーカー独自の基準で測定している。基本的に駆動時間に有利な条件で測定しているため、実用上は公称値に満たない場合が多い。異なるメーカー同士の製品も比較しにくくなっている。
業界の測定基準があるのはノートパソコンやデジカメくらいだ。スマホの動作時間も実際との乖離(かいり)が大きい。NTTドコモが是正に動いており、2013年にはユーザーの平均的な利用動向に近づけた「実使用時間」を採用。16年夏以降には、KDDIと共同で設定した基準で測定している。

[日経PC21 2019年3月号掲載記事を再構成]