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『ボヘミアン・ラプソディ』 大ヒット生んだ常識破り

日経エンタテインメント!

2019/2/5

1970~80年代に活躍した伝説のロックバンド・クイーン。そのリードボーカル、フレディ・マーキュリーの激動の半生を描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』の快進撃が止まらない。2018年11月の公開から3カ月近くなってなお、興行収入は右肩上がりが続いており、年をまたいだロングランヒットに。1月28日までの累計動員は760万人、興収は105億円を突破。18年の興行ランキング1位になった。

『ボヘミアン・ラプソディ』(20世紀フォックス映画/公開中)(C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

「ロック映画は当たらない」という業界の定説をすっかり覆した格好の『ボヘミアン・ラプソディ』。どうしてここまでの大ヒットになったのか。探っていくと、宣伝戦略と作品のポテンシャルにまつわるいくつかの“非常識”が浮かび上がってきた。

成功要因としてまず挙げられるのが口コミでの拡散だ。と言うと、戦略をあまり感じられないかもしれないが、宣伝ターゲットとして最初に合わせた照準がヒットの起爆剤として大きな役割を果たしている。配給会社が取りに行ったのは、クイーンのファン。当たり前のように思えるが、実はこれ、宣伝ターゲットとしては“そんなに狙わない層”と言われている。20世紀フォックス映画・星野有香マーケティング本部長はこう説明する。

「どのジャンルにも言えることですが、ファンの方はどのみち見てくれるので、宣伝する際は“その周辺”を狙うのが常識。でも『ボヘミアン・ラプソディ』の場合、いつもの方法論でいくと、ファンを狙ったときより興行収入が低くなるというリサーチ結果が出たんです。普通は逆なので、耳を疑いました」(星野氏、以下同)

これはクイーンのファン構造によるところが大きい。核にいるのは50代男性。ここを中心としたいわゆるゴリゴリのコアファン以外に「クイーンの曲を知っている」「クイーンが好き」という、少し下の世代やライトな女性ファンの比率がかなり高いことだ。予告編を見せたところ、ライト層もコアファンに引けを取らない強い反応だったことから、マーケティングチームは『ボヘミアン・ラプソディ』に対するクイーンファン全体の意欲度はかなり高いと確信。彼らをロックオンし、動き出した。

素晴らしい音楽がたくさんある映画

「プロモーションの第一段階は、素晴らしい音楽がたくさんある映画であることを打ち出しました。クイーンの曲を知っている人に向けて。『クイーン楽曲総選挙』をSNSで募集してランキングを発表したり、カラオケに『クイーンルーム』を作ったり。NHK‐FMで『今日は一日“クイーン”三昧』という10時間特番を組んでいただくなど、ラジオでの展開も積極的に実施しました」(同)

ちなみに公開前のマスコミ試写では作品に対する評価こそ高かったものの、成否については半々くらいの意見だったそうだ。不発予想の多くは「だってロック映画でしょ」。08年公開のザ・ローリング・ストーンズの映画(※1)が3億円前後の興収だったことを考えると無理もないが、「それでもいける」と星野氏を思わせたのは、15年前のこんな記憶もあった。

「04年に『プライド』という木村拓哉さん主演のドラマがあり、劇中でクイーンの曲が多数使われました。この時に出た『Jewels』というアルバムが180万枚売れている。ドラマは25%を超える視聴率を取っていましたから(※2)、ここでクイーンを知った人も相当数いるはず」(同)

(※1)『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』。アカデミー賞監督であるマーティン・スコセッシが撮った音楽ドキュメンタリー。 (※2)関東地区での平均視聴率は25.2%、最高視聴率28.8%。木村拓哉ふんするアイスホッケー選手が主人公の連続ドラマで、フジテレビ月曜21時枠で放送された。主題歌の『I Was Born To Love You』はじめ、多数の曲が劇中に使用されており、今回の映画のタイトルにもなった楽曲『ボヘミアン ・ラプソディ』も最終回に登場。

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