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『ボヘミアン・ラプソディ』 大ヒット生んだ常識破り

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NIKKEI STYLE

1970~80年代に活躍した伝説のロックバンド・クイーン。そのリードボーカル、フレディ・マーキュリーの激動の半生を描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』の快進撃が止まらない。2018年11月の公開から3カ月近くなってなお、興行収入は右肩上がりが続いており、年をまたいだロングランヒットに。1月28日までの累計動員は760万人、興収は105億円を突破。18年の興行ランキング1位になった。

「ロック映画は当たらない」という業界の定説をすっかり覆した格好の『ボヘミアン・ラプソディ』。どうしてここまでの大ヒットになったのか。探っていくと、宣伝戦略と作品のポテンシャルにまつわるいくつかの"非常識"が浮かび上がってきた。

成功要因としてまず挙げられるのが口コミでの拡散だ。と言うと、戦略をあまり感じられないかもしれないが、宣伝ターゲットとして最初に合わせた照準がヒットの起爆剤として大きな役割を果たしている。配給会社が取りに行ったのは、クイーンのファン。当たり前のように思えるが、実はこれ、宣伝ターゲットとしては"そんなに狙わない層"と言われている。20世紀フォックス映画・星野有香マーケティング本部長はこう説明する。

「どのジャンルにも言えることですが、ファンの方はどのみち見てくれるので、宣伝する際は"その周辺"を狙うのが常識。でも『ボヘミアン・ラプソディ』の場合、いつもの方法論でいくと、ファンを狙ったときより興行収入が低くなるというリサーチ結果が出たんです。普通は逆なので、耳を疑いました」(星野氏、以下同)

これはクイーンのファン構造によるところが大きい。核にいるのは50代男性。ここを中心としたいわゆるゴリゴリのコアファン以外に「クイーンの曲を知っている」「クイーンが好き」という、少し下の世代やライトな女性ファンの比率がかなり高いことだ。予告編を見せたところ、ライト層もコアファンに引けを取らない強い反応だったことから、マーケティングチームは『ボヘミアン・ラプソディ』に対するクイーンファン全体の意欲度はかなり高いと確信。彼らをロックオンし、動き出した。

素晴らしい音楽がたくさんある映画

「プロモーションの第一段階は、素晴らしい音楽がたくさんある映画であることを打ち出しました。クイーンの曲を知っている人に向けて。『クイーン楽曲総選挙』をSNSで募集してランキングを発表したり、カラオケに『クイーンルーム』を作ったり。NHK‐FMで『今日は一日"クイーン"三昧』という10時間特番を組んでいただくなど、ラジオでの展開も積極的に実施しました」(同)

ちなみに公開前のマスコミ試写では作品に対する評価こそ高かったものの、成否については半々くらいの意見だったそうだ。不発予想の多くは「だってロック映画でしょ」。08年公開のザ・ローリング・ストーンズの映画(※1)が3億円前後の興収だったことを考えると無理もないが、「それでもいける」と星野氏を思わせたのは、15年前のこんな記憶もあった。

「04年に『プライド』という木村拓哉さん主演のドラマがあり、劇中でクイーンの曲が多数使われました。この時に出た『Jewels』というアルバムが180万枚売れている。ドラマは25%を超える視聴率を取っていましたから(※2)、ここでクイーンを知った人も相当数いるはず」(同)

(※1)『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』。アカデミー賞監督であるマーティン・スコセッシが撮った音楽ドキュメンタリー。 (※2)関東地区での平均視聴率は25.2%、最高視聴率28.8%。木村拓哉ふんするアイスホッケー選手が主人公の連続ドラマで、フジテレビ月曜21時枠で放送された。主題歌の『I Was Born To Love You』はじめ、多数の曲が劇中に使用されており、今回の映画のタイトルにもなった楽曲『ボヘミアン ・ラプソディ』も最終回に登場。

とはいえ、映画の本質はやはり「ストーリー」。それについては、音楽のアプローチがひと区切りしたタイミングを狙って切り替えた。「公開が近づいたタイミングで、この映画には感動の物語があることを出していきました。あなたがいいと思っていた曲には、こんな意味があるのだと」(同)

公開後はファンの評判が上下の世代に広がっていき、結果的に男女問わず10代から80代までが劇場を訪れる映画に。SNSなどでは、クイーンを知らなかったであろう、若い世代が感動に打ち震えている様子に遭遇することも多い。時間がたつにつれ、親子での鑑賞も増加。劇中で描かれているフレディの孤独感――セクシャリティーや容姿、国籍などに対する偏見や差別――が、多様性を重んじる今だからこそ、様々な世代に深く刺さったと言える。

星野氏によると、2回以上この映画を見た人は4割を超えるという。そんなリピーターを増やしているのがIMAXやドルビーアトモス、4D、ScreenXなど、ハイスペックな劇場の存在だ。

なかでも関係者を驚かせたのは、公開4週目になって、こうした特殊シアターが『ボヘミアン・ラプソディ』の上映を再開したこと。公開から2週間で興収の8割を稼ぐと言われる映画業界では、3週目以降は席数が減り、ハイスペックなスクリーンは公開直後の話題作に変わるというのが相場。『ボヘミアン・ラプソディ』に関して言えば、3週目に『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』の公開があったため、この週から客足も落ちていくだろうと誰もが思っていた。

しかしフタを開けてみたら前週対比102%を記録。その翌週である4週目には特殊シアターが続々戻ってくる事態となり、この週に公開以来最高の単日興収2.6億円を記録した。

映画館別興収ランキングでは、TOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ新宿、TOHOシネマズ六本木ヒルズなど、都心のシネコンが上位に並んでいるが、ここでも珍しい現象が起きている。「上位3館に続くのが立川のシネマシティ。ここでは極上音響上映を通常料金で見られるのもあって、リピーターの方がわざわざ選んで行っていると思われます」(同)

応援上映も通常より10倍近い多さで、11月29日時点で実施しているのは全国116スクリーン。加えて、普段なら売れ残ることが多い前方の座席がよく売れるのも特徴だという。「ライブをかぶりつきで見る感覚。映画が体験化している」(同)。

次々と新たな話題が生まれ、人気が拡散

最後に、『ボヘミアン・ラプソディ』の日本公開はカレンダーの上でいくつもの奇遇があったことも記しておきたい。それは客足が落ちるはずだった「3週目」から起きていた。

3週目の週末はフレディ・マーキュリーの命日(11月24日。フレディは91年にエイズで死去)。4週目の週末は「映画の日」と「世界エイズデー」(12月1日)。5週目には、ゴールデングローブ賞の作品賞と主演男優賞にノミネート(12月6日)。その度に様々な角度でこの映画が取り上げられ、話題になった相乗効果もあるだろう。

配給元には取材依頼が後を絶たないそうだが、公開前は俳優を個別に取り上げてくれるテレビも2、3番組程度で、プロモーションは苦戦していたという。そんななか、最初はラジオが自発的に盛り上がっていたという事実も、どこかクイーンの軌跡と重り合う。

この状況は年が明けても続いている。1月6日にはゴールデングローブ賞の作品賞を受賞したほか、主演のラミ・マレックが男優賞に(共にドラマ部門)。2月24日に発表されるアカデミー賞は5部門の候補(日本時間25日)。喝采の輪は、きっとまだまだ大きくなる。

『ボヘミアン・ラプソディ』
常識を打ち破り世界を変えたロッカーの物語

ロックバンド・クイーンの誕生からライブ・エイドでの伝説的パフォーマンスまで、リードボーカル・フレディが送った激動の半生を28の名曲と共に描いた感動物語。フレディ役のラミ・マレックをはじめ、本人生き写しのキャストも話題に。実際のメンバーであるブライアン・メイとロジャー・テイラーは音楽総指揮として参加している。プロデュースは世界的ボクサーのモハメド・アリをはじめとする実在著名人を描いた作品に定評のあるグラハム・キング。監督は『ユージュアル・サスペクツ』、『Xメン』シリーズのブライアン・シンガー。日本公開2018年11月9日。サウンドトラックの出荷枚数は41万枚(2019年1月21日付オリコンアルバムランキング)。

(ライター 木村尚恵)

[日経エンタテインメント! 2019年2月号の記事を再構成]

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