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花に「耳」? 羽音を聞いて蜜を甘くする植物を発見

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/2/2

ナショナルジオグラフィック日本版

マツヨイグサのお椀の形に、音を聞く秘密が?(PHOTOGRAPH BY DENNIS FRATES/ ALAMY)

音は生命にとって、またその生き残りにとって、とても基本的な要素だ。そこで、イスラエルにあるテルアビブ大学の研究者リラク・ハダニー氏は疑問に思った。「音を感知できるのは動物だけなのだろうか? 植物も感知できるとしたら?」 この仮説を検証した結果が、論文投稿サイト「bioRxiv」(バイオアーカイブ)に発表された。それによると、少なくともこの実験では、植物には音を聞く能力があるという結果が出た。それは植物の進化に有利に働く能力だった。

ハダニー氏の研究チームがマツヨイグサ属の花(Oenothera drummondii)を使って実験したところ、花粉を媒介するハチの羽の振動を感じ取ってから数分のうちに、蜜の糖度が一時的に高くなったことがわかった。つまり、花が耳の役割をもち、ハチの羽音の特定の周波数だけを拾って、風などの関係ない音を無視していた。

■特定の周波数に反応

進化論者として、ハダニー氏は音が自然界の普遍的な資源であることに気が付いた。そうであれば、植物が音を利用しないのは、資源を無駄にしていることになる。動物と同じように植物も音を聞き、それに反応する能力を備えていれば、自分の遺伝子を後世に残す確率を上げられるはずだ。

植物にとって、授粉は繁殖のカギを握っている。そこで、ハダニー氏らはまず花を研究することにした。テルアビブのビーチや公園に自生するマツヨイグサを研究対象に選んだのは、開花期間が長く、計測可能な量の蜜を生産するためだ。

研究チームは、マツヨイグサに5種類の音を聞かせた。無音、録音したミツバチの羽音、コンピューターで生成した低周波音、中周波音、そして高周波音だ。

すると、振動を防ぐガラス瓶に入れられて無音の状態にさらされた花は、蜜の糖度に目立った変化を起こさなかった。高周波音(15万8000~16万ヘルツ)と中周波音(3万4000~3万5000ヘルツ)を聞かされた植物にも変化はなかった。ところが、ハチの羽音(200~500ヘルツにピーク)と、それと似た低周波音(50~1000ヘルツ)を聞かされた植物は、音を聞かされてから3分以内に、12~17%だった蜜の糖度を20%まで上昇させた。

蜜が甘くなれば花粉を媒介する昆虫を多く引き寄せ、授粉の成功率を高めるのだろうと、研究チームは考えている。実際、野外での観察でも、いちど花粉媒介者が訪れた花に次の花粉媒介者が近づく確率は、6分以内で9倍以上高くなることを彼らは確かめた。

「仮説通りの結果が出たときには、とても驚きました」と、ハダニー氏はいう。「条件や季節を変えて、室内と室外で育った植物の両方で実験を繰り返した後、私たちはこの研究結果に自信を持っています」

■花の聴覚の仕組み

振動が伝わってそれを解釈するという、音を利用する仕組みを考えると、花のもつ役割がますます気になる。花が開いた時の形や大きさは様々だが、その多くは中心がへこんだお椀の形をしている。パラボラアンテナのように、音波を受けとめて増幅させるのにちょうどよい形状だ。

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