起業家は視座上げよ スタートアップ道場主の投資基準エンジェル投資家の千葉功太郎氏に聞く

――「千葉道場」はコロプラ副社長時代に勉強会として始めたそうですが、道場の目的は何でしょうか。

「起業家の視座を上げることをまず重視しています。視座とは物事を見るときの立ち位置のこと。つまり、理想を高く保つことです。少子高齢化といった社会の課題を見据え、自社の長期ビジョンを練る。企業経営をやっていると、採用面接や顧客とのトラブル、社員が辞めると言い出した、オフィスがいっぱいで座れないなど、目の前の課題に追われてしまう。それが現実なんです。千葉道場で半年に1回全員で集まり、低くなった視座をもう一回上げる。それを繰り返していくと徐々に視座が高くなります」

「大企業の社員だと研修があるじゃないですか。社員は面倒だなと思って参加しているかもしれませんが、私は人事担当をしていた経験からも、これは日本のよくできた人材育成システムだなと思っていて。そういう研修的な要素を採り入れているのも道場の特徴です」

道場で視座を上げる訓練 赤裸々なピンチ告白も

起業家には高い視座と人生のストーリーが必要だ

――1泊の合宿だそうですが、どんなことをしていますか。

「金曜日の朝6時にスタートして、公式に終了するのが深夜2時。20時間ぶっ通しでディスカッションやワークショップをし続けて、まるで知のフルマラソンです。テーマはファイナンスや組織マネジメント、論理的思考力など様々。一般的なセミナーやカンファレンスとの最大の違いは、赤裸々なケーススタディーをやることですね」

――赤裸々というと?

「共同創業者が離反しそうだとか、役員が裏切ったとか。資金調達では、大手企業からの出資が決まりかけていたのに、急にハシゴを外されて、来月には資金ショートして倒産するかもしれないとか。ケーススタディーではなく、現実の問題として告白されることもあります。乗り切れたら、次回はその経緯を発表したりします」

「皆でわーっと知恵を出し合って助けますね。他人の修羅場は自分ごと。明日は我が身って誰もが思っている。だから笑えない。そうなりたくないと思うので、ノウハウを今のうちに身に付けたいんです。みんな必死だから、このコミュニティーが成り立っている。大学のアントレプレナー講座のように未来を夢見て勉強しているのではなくて、本当に生きるか死ぬかの戦場でのノウハウを共有しているわけです」

――実際に問題を乗り越えられず、退場した企業はありましたか。

「社会的に大成功した企業やユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)を輩出していないという点で私は投資家としてまだ成功したとは言えません。それでも私の自慢は今まで投資先が1社も倒産していないことです。千葉道場での助け合うコミュニティーも一因かなと思います」