国際的ヒット本が教える 「世界はそんなに悪くない」アンナ・ロスリング・ロンランド氏×堀正岳氏(下)

例えば欧州や北米の人々、そしてある程度は日本人も、「重要な発明やできごとはすべて先進国で始まり、そこから周辺へと広がってゆく」という印象を持っている傾向があります。しかし視点をグローバルに広げ、自分たちが必ずしも世界の中心ではないという考えで見直してみると、さまざまなイノベーションや新しい時代の潮流が、世界の別の場所で盛り上がっていることを認められるはずです。

やがて、多くの国が「レベル4」の先進国か、少なくとも「レベル3」に追いつくことでしょう。先進国の我々は自分たちこそが世界市場だと考えていますが、実態はむしろ逆で、世界が私たちの元にやってきつつあるのです。

 日本でも最近、やがて国が衰退するのではという危機感をもって語られることが多くなってきました。

アンナ それは欧州でも同じです。そして世界の歴史から考えるなら、なんと素晴らしい旅路であったことかと言うこともできるのです。ここで「欧州は沈んではならない」「私の国だけは衰退してはならない」という視点でデータを見るならば、必ず視点に偏りが生じます。むしろ、やがて来る世界における自分の立ち位置を意識して、そこでの役割を模索する視点が重要になるはずです。

謙虚さと好奇心が、争いを解決する

 最後に一点だけ。私はふだん気候学者として研究をしているのですが、温暖化懐疑論のように、思考が凝り固まっていて、自分の偏見や結論にしがみついている人にフラストレーションを感じることがあります。このような時、どうすればいいのでしょうか?

アンナ 健全なディベートは必要ですが、どちらが間違っているかと意見を戦わせることだけが問題の解決につながるとは限りません。人は否定されることを好みませんし、自尊心にしがみつくものです。

謙虚さと好奇心によって議論を高めることが必要になるのです。対決の構図を一歩引いた場所から見ることで、両者が把握しきれていない、理解し合えていない問題があるはずだと考えます。そして議論そのものを一段階上のレベルに持ち上げることを、両者が試みなければいけません。

子供たちをご覧なさい。彼らは間違っていることを指摘されると「あ、そうなの」と、即座に意見を変える身軽さがあります。私たちもそこから学ぶ必要があります。「知っているつもりでいたけれども、私は間違っているかもしれない」「もっと高いレベルの理解があるかもしれない」と謙虚さを学ぶこと、これが『FACTFULNESS』で私たちが目指したテーマなのです。

 最後になりましたが、ハンスのTEDトークを見て感動した日本のファンの一人として、ハンスの死に心よりお悔やみを申し上げます。と同時に、彼の言葉がこうして日本の読者に届いて、後世に残されることに大きな心強さを感じています。今日はありがとうございました。

アンナ きっとハンスも喜んでいると思います。本書が日本の皆さんの導きとなりますように祈っています。

堀正岳
研究者・ブロガー。北極における気候変動を研究するかたわら、ライフハック・IT・文具などについて紹介している。著書に『ライフハック大全』など多数。

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

著者 : ハンス・ロスリング, オーラ・ロスリング, アンナ・ロスリング・ロンランド
出版 : 日経BP社
価格 : 1,944円 (税込み)

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