国際的ヒット本が教える 「世界はそんなに悪くない」アンナ・ロスリング・ロンランド氏×堀正岳氏(下)

 それで、問題の根源に遡って本を書くことになったのですね。

体系化するうちに発見した「10個の思い込み」

アンナ それも平たんな道のりではありませんでした。ハンスの講義は情熱的で、話題がまとまっている方ではありませんでしたので、私とオーラで彼の考えを体系化するうちに、これがより深い視点につながっていることに気づきました。ハンスがどんなに熱意を込めて教えても学生たちが繰り返し誤解してしまう部分に、私たちがデータを見るときに陥りやすい「本能」が存在していることを発見したのです。

 それが本書で提示されている「10の思い込み」ですね。私が本書を読んで感動したのも「これが真実の見方だ」と教え諭すのではなく、「真実を探すときにはこうした落とし穴に気をつけろ」と、正しい道の探し方を教えてくれるところだったのですが、それはハンスと、お二人のコラボレーションの成果だったのですね。

アンナ 出版社に本の企画をもちこんだ時、ハンスは「この本は私と、オーラとアンナの3人の成果だから、文中では I (私)ではなく We (私たち)で統一すべきだ」とねばったのですよ(笑)。最終的にはハンスを中心とした「私」の人称で執筆しましたが、読者はそこに私たち3人の声を耳にするかもしれません。

『FACTFULNESS』は日常でも応用可能

 ここで、一般の読者の視点についてお聞きしたいと思います。『FACTFULNESS』を読み、データに対する見方を手に入れた読者はどのようにそれを活用し、実践すればよいとお考えですか?

アンナ 私たちはこれが面白おかしく、簡単に読める本であるように注意して執筆しました。しかし一読した後は、ぜひもう一度それをハンドブックのように実践的に活用していただきたいと考えています。そうした配慮から、各章にはその章の主な学びをまとめてあり、すぐにエッセンスを取り出せるようにしてあります。

例えば報告書を書いていたり、データに基づいて他の人を説得する仕事をしていたりする際に、「こうした直線のグラフを見せる時には、気をつけないと聴衆は『直線本能』にとらわれて誤解する可能性がある」と意識できるようになるでしょう。そうして誤解が生じやすい場所に気づいたなら、注意をうながしたり説明を補ったりといったように、統計的により誠実で正確な表現を心がけることができるようになります。

また、『FACTFULNESS』で学ぶ10の思い込みは、実生活でも大いに役立つはずです。多くの人は、何か誤解が生じた時に「それはメディアがいけない、メディアを変えろ!」といったことを口にします。しかしデータや事実を伝えることの困難さを理解しているなら、一歩下がって「メディアは最大限努力をしているはずだ。では、どこに誤解や偏見が入り込んでいるのだろうか?」と、問題の根源に迫ることができるはずです。そうした、バランスをもった視点=パースペクティブを持つために、『FACTFULNESS』を活用してほしいのです。

問題を世界全体で考える習慣

アンナ 私たちは本書で、「なぜこのようになったのか」という説明にはなるべく触れないように注意しました。というのも『FACTFULNESS』は世界をもっと素直に見るように読者を刺激し、挑発するための本だからです。

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