毛皮を使わないエコファーコート 華やかさに優しさを
宮田理江のファッション戦略論
真冬の装いに華やかさや遊び心をプラスしてくれるファー素材。今、とりわけ人気を集めているのが動物の毛皮を使わない人工のエコファー(フェイクファー)。その理由と魅力を、ファッションジャーナリストの宮田理江さんに解説してもらいます。
人工のエコファー人気が盛り上がっている。動物由来のリアルファーではなく、化学繊維で作ったファー風素材だが、技術が進み、本物と区別がつかないほどの質感に進化している。最近は商品のバリエーションも一気に広がり、さまざまな形や色を選べるようになってきた。ニューヨーク発のブランド「HEURUEH(ハウルー)」の新作を手掛かりに、手軽に華やぎをまとえるエコファーの取り入れ方を押さえていこう。
いいことづくめのエコファーの魅力とは?
エコファーは世界的に脚光を浴びている素材だ。一番の魅力は着心地の軽さ。リアルファーのような、肩にずしりとくる重たさとは無縁だ。それに加え、商品価格を含め、デイリーに使いやすい点も支持率が高い。天然のリアルファーに比べ手入れが楽な上、カビが生えにくいから、自宅で安心して保管できる。染色しやすい化学繊維なので、色・柄のバリエーションも豊富だ。
NYで2015年に設立された「ハウルー」はPETA(動物の倫理的扱いを求める人々の会、People for the Ethical Treatment of Animals)に承認を受けたファーフリー素材だけを使用。動物の命を犠牲にしない「クルエルティフリー」を掲げている。
2018-19年秋冬コレクションは、旅行で訪れた街や、旅先で出会った人々からインスパイアされた。「Real People Faux Fur(Faux Furはフェイクファーの英語表現)」をテーマに、エコファーの魅力を打ち出している。
ジーンズに合わせてあでやかカジュアルに
グラマラスなムードのエコファーコートに、カジュアルの代名詞といえるジーンズを引き合わせると、テイストミックスが利いてこなれ感が出る。ジーンズに合わせても、ファー特有のあでやかな着映えが生きるから、気取らないお出掛けルックにも取り入れやすい。
鮮やかな色に染められるのは、ハイテク素材を使ったエコファーならではのよさだ。ネオンカラー(蛍光色)やビビッドカラーを生かせば、量感がたっぷりしたタイプのファーアウターに遊び心が加わり、軽やかな着映えに仕上がる。
あでやかカラーで冬ルックをグラマラスに格上げ
ファッショニスタもエコファーを積極的に取り入れている。ダークカラーが多くなりがちな冬ルックに、赤やオレンジなど、暖色のファーが華やかさとぬくもり感を演出。黒主体のブラックコーデにファーがグラマラスなムードを乗せた。ボリュームがたっぷりあるのに、マルチカラーが軽やかなリズムを添えている。
サッと羽織るだけで着姿がまとまる
エコファーはしっかりと暖かさを保つのに、物理的な重さがぐっと抑えられて着心地が軽いから、出番を増やしたくなる。ベーシックなアイテムを軸にした装いの日でも、最後にファーアウターをサッと羽織って、着姿をまとめる感覚で取り入れるのが普段使いのコツだ。少し華やぎが欲しくなる、冬シーズンのおしゃれの参考にしてみては。
ファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。多彩なメディアでランウェイリポートからトレンド情報、スタイリング指南などを発信。バイヤー、プレスなど業界経験を生かした、「買う側・着る側の気持ち」に目配りした解説が好評。自らのテレビ通版ブランドもプロデュース。セミナーやイベント出演も多い。 著書に「おしゃれの近道」「もっとおしゃれの近道」(ともに、学研パブリッシング)がある。
[nikkei WOMAN Online 2018年12月22日付記事を再構成]
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