凡人は天才に憧れますが、天才が放つ革新的なアイデアを理解できなければ、排斥に傾きがちです。天才と凡人のコミュニケーションが断絶していた場合、天才に強く共感して説明役や根回し役を買って出るような人が現れなければ、アイデアの実現は難しいでしょう。さらに近ごろの会社は、意思決定でKPI(重要業績評価指標)を重視しますが、その手法では天才の新事業は判断できないといいます。
(ステージ1 才能ってなんだろう 45ページ)
自分の「才能」 どう生かす?
会社が3タイプの才能を持つ人でできているとして、あなたはどのタイプでしょう。著者は、3つの要素は誰でも持っており、置かれた状況などによってバランスが変わるものだと指摘します。同じ会社でも、創業当時と大きくなった今というように、フェーズが違えば、必要な才能は違ってくるのです。
再現性が強い人は、管理部門、マネージャーなど、組織が拡大していたり、利益改善が必要とされる部署のフェーズが合う。
共感性の強い人は、営業、マーケティング、広報、人事など、多くの人に製品を広げる仕事のフェーズが合う。
――といったことが推測できます。
(解説 217ページ)
著者は、「仕事が楽しくない」「やりたいこともわからない」と嘆く人は、自分の才能のバランスと仕事のフェーズのずれに気づいていない可能性があると指摘します。自分の才能と働き方を見つめ直し、その上でどんなキャリアを切り開いていくかを考えてみる――。そんなときに役立つ新しい視点を得られる一冊です。
(雨宮百子)
◆編集者からひとこと 桜井保幸
著者の北野さんに初めて会ったのは2018年3月のことです。当時、北野さんは本書の骨格となっている「天才・秀才・凡人」の考え方を自身のブログで披露したばかり。記事は大きな話題になっていました。そのときの会話が強く印象に残っています。
北野さん「すぐれた理論というのは、様々なレベルで応用ができるものだと思うんです。天才・秀才・凡人の構図は、組織論のレベルでも、社会論のレベルでも、一人の個人の中でも成立するんです」
私「面白いですね。この理論はご自身で考えたんですか」
北野さん「そうです。こういうことを考えるのが好きなんです」(笑顔で)
本書の最初の原稿は、実はブログの硬い書き口を踏襲した解説書風でした。「ちょっと硬いですかね」という私の感想に対し、北野さんが出した答えが、あるベンチャー企業を舞台にした物語というスタイルです。読みやすくなったのはもちろん、実際のビジネスシーンで、それぞれの才能がどう発揮されていくのかもイメージしやすくなったと思います。