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学生のメリット見えない 大学スポーツ統括組織の謎 ドーム社長 安田秀一

2019/1/31

箱根駅伝は大きなビジネス価値を持つイベントに育ったが…(1月2日、東京・大手町)=共同

全米大学体育協会(NCAA)を参考に、日本でも大学スポーツの統括組織の構想が動き出しました。「大学スポーツ協会(UNIVAS)」という名前で、2月にも発足の予定です。これに真っ向から異を唱えるのが、スポーツ庁の検討会に早くから加わっていた安田秀一氏です。同氏は米スポーツブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店ドームで社長を務め、米国の大学スポーツやビジネスの実情にも通じています。何が問題なのか、本コラムで思いの丈をつづりました。

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新年らしく明るい話題で日本のスポーツを盛り上げていきたいのですが、残念ながらネガティブなテーマを取り上げなくてはなりません。今春発足する日本版NCAA、つまりUNIVASのことです。もともと「NCAA」の名前を使いながら、まったく違うものができてしまっています。本場米国のNCAAは様々な活動を通じて巨額の税金を納めていますが、UNIVASには借金だらけの我が国の税金が投入されます。なぜ、日本はこうなってしまうのでしょうか。

ドーム社長の安田秀一氏

僕は日本版NCAAを作ろうという取り組みに最初から関わってきました。この活動を通じて、日本の借金がなぜ減らないのか、なぜ経済成長ができないのか、その理由をつぶさに見ることができた気がしました。

それは、封建文化を前提にする族議員や官僚たちの「見えざる手」が、合理性をすっとばして、自己や自身の帰属する組織の利得になる方向に結末をもっていこうとする力学が働いているから。そう考えないと理解できないことだらけで、振り返ると「謎だらけ」の活動でした。借金と国民に課す税金を増やし続け、こうした官主導の新組織を作り、友好企業に仕事を出し、天下り先を作っているのかなあとさえ思えてきます。

僕個人の話で恐縮ですが、学生アスリートである後輩たちのあまりに不遇な環境を憂い、日本版NCAAを成就させようと政治家や行政に協力してきました。日本の大学の国際的な競争力が下落の一途をたどっている現状を踏まえ、スポーツを通じて大学を活性化させたい。そんな思いも持っていました。

スポーツ庁の担当者を交え、我々の会社の会議室で何度も検討を重ね、行政にNCAAの会長や幹部を紹介し、ともに米国の視察にも行きました。毎年1月に開催されるNCAA最大のイベントの一つ、NCAAコンベンション(年次総会)には会社として3年連続で参加しています。純粋な気持ちで活動してきただけに、えたいの知れない無力感に包まれています。一人の納税者として、今後はUNIVASに反対せざるを得ないことが残念でなりません。

■理事の顔ぶれに強い違和感

中学、高校を含む日本の学生スポーツの問題は、運動部の存在が「課外活動」、つまり学校とは何ら関係のない任意団体であることに集約されます。大学側は運動部の予算にも人事にも関与しません。監督やOB会の善意による運営のみが頼りで、「正しい運営管理の基準」はありません。

主な活動費は各家庭の家計から賄われる部費です。任意団体ですから組織として銀行口座も作れず、部費は「××大学××部監督××」という個人口座で管理され、そのお金は口座名義の個人の所有物という形になっています。チケットやグッズを販売しても消費税を取りませんし、そもそも納税すべきというマインドすら欠けています。

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