何がパワハラか悩む管理職 企業に防止策義務付けへ

「好ましくないのは社外から行動べからず集を持ってきて『これはいかん』『あれは許されない』などを管理職にそのまま求めること。先述した『バカヤロー』ではないですが、同じ言動であっても時と場合によってパワハラか否かの判断は分かれます。やってはいけない行為を羅列するだけでは管理職は萎縮し、十分な指導ができなくなる恐れもあります」

――とはいえ独自にガイドラインを作る企業は多くなさそうです。

「目の前の部下を叱ったり、業務命令を出したりする前に想像力を働かせてみるように研修では勧めています。これから発しようとする言葉を、自分の子どもやパートナーが勤務先の上司から浴びている場面を想像してみてください。あなた自身は納得して見ていられるでしょうか。不快に思うようでしたら、その言動はパワハラに当たる可能性大です。目の前の部下を社長の子どもだと想像してみるのも有効です。パワハラ行為は職場内の上下関係に基づき、相手が弱い立場だからこそしてしまう行為です。社長の子どもであっても、同じようにためらわずに叱ったり、指示できたりすれば問題ないでしょう」

「パワハラが職場で広がる背景には人材の多様化もあります。かつての日本企業は仕事の価値観を共有する一枚岩の組織でした。そうした組織であれば『仕事はこう進めるべき、こう取り組むべきだ』といった“べき論”で指導しても上司と部下の間で軋轢(あつれき)は生じにくかったはずです。でも今は1つの職場に様々な人が働いています。正社員と非正規社員では会社への帰属意識も違うでしょうし、正社員という立場が同じでも仕事を最優先にできる社員もいれば、子育てや介護などの事情を抱えて家庭を重視せざるを得ない社員もいます。“べき論”で指導しようとすれば価値観の衝突が起きて当然です。価値観の相違が生じた場面で、上下関係を盾に力で押さえ込もうとしたときにパワハラは起きやすくなります」

「パワハラは許されない行為ですが、どんなに気を付けていても上司と部下の絶対的な関係の下で部下を傷つけたり不快にさせたりする言動は起きてしまいます。その場では気付かなかったとしても、後で『言い過ぎた』『やり過ぎた』と思ったら、素直に謝る姿勢も管理職には大切です。パワハラは指示内容が正しかったのか間違っていたのかという問題ではありません。指示内容が正しければ上司は部下に謝るのを避けてしまいがちです。でもパワハラを受けた部下は仕事へのモチベーションが下がり、管理職との信頼関係も壊します。それがひいては職場全体の生産性低下につながります。管理職は、部下が気持ちよく働き、成果を上げる環境を整える責任があることを忘れてはいけません」

(編集委員 石塚由紀夫)

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