何がパワハラか悩む管理職 企業に防止策義務付けへ

管理職の多くは仕事上の成功体験を持っていて、それが仕事をやり遂げる自信の源にもなっています。吉田氏は「管理職は『自分ができたのだから、部下もできる、できないのはおかしい』といった発想に陥りがち。それが過剰な指導につながる一因でもある。自分の価値観を押しつけず、部下一人ひとりに寄り添う姿勢がパワハラ防止に欠かせません」と助言します。

吉田仁・21世紀職業財団客員講師「想像力を働かせる」

21世紀職業財団は、厚生労働省の委託事業を含めて年間900回程度もパワーハラスメントに関するセミナー・企業内研修を開いています。社会保険労務士でもあり、ハラスメント関連の講師を多数務める同財団客員講師の吉田仁氏に管理職の心得を聞きました。

――企業が一番関心を持っていることはなんですか?

吉田仁・21世紀職業財団客員講師

「どんな言動は許されないのか。パワーハラスメントの具体的な基準・定義を人事担当者や管理職は知りたがります。ただこれが難しい。適正な範囲を超えた指導はいけないと言われても、適正の範囲を言葉で漏れなく説明はできません。そもそも何が適正なのかは、業種や職種、企業文化、時代によっても異なり、すべての企業に共通する統一基準は示せません」

「例えば危険が伴う建設現場でヘルメットも着用せずに立ち入ろうとした部下を上司が咄嗟(とっさ)に『バカヤロー、危ないだろ。ヘルメットをかぶれ』と怒鳴ったとします。身を危険にさらす確率が高い場面であれば、言葉がきつくとも適正な指導に当たるでしょう。でも同じ上司と部下の組み合わせでも、差し迫った危険もないオフィスの会議室で『バカヤロー』と大声を張り上げたらアウトです」

「部下に過重な業務を課す行為もパワハラに値しますが、どこからが過重なのかを数字で示すことは不可能です。例えば営業ノルマで考えてみましょう。右肩上がりで急成長している業界ならば前年比2割増のノルマを課しても過重とはいえないかもしれません。でも市場全体が縮小している業界で2割増の販売を部下に求めるのは無理なノルマです」

「今後、国は法制化に向けてパワハラの定義を指針などで明確にしていく方針ですが、どこまでセーフでどこからがアウトなのかを、言葉で説明し尽くせません。企業や管理職はパワハラと適正な指導の境界線を知りたがりますが、残念ながら、これから先も明確な線引きはできないと考えておくべきです」

――だけど線引きがないと管理職は怖くて指導もできません。

「適正の範囲は業種や職種、企業文化によって異なります。理想は各企業が、自分たちの業種特性や職場環境・風土を考慮し、どこまでが適正なのかを独自ガイドラインにまとめることです。このとき一方的に会社側が示してはいけません。社員と丁寧に対話し、互いに納得できるガイドラインをまとめるといいでしょう」

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