オンライン診療の真の実力 便利さが患者の意識高める未来を変えるアンメット・メディカル・ニーズ最前線

日経Gooday

オンライン診療は便利なだけでなく、患者の行動を変えるという点でも期待される。写真はイメージ=(c)Andriy Popov-123RF
オンライン診療は便利なだけでなく、患者の行動を変えるという点でも期待される。写真はイメージ=(c)Andriy Popov-123RF
日経Gooday(グッデイ)

医療分野の満たされないニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ)についての治療分野の革新に焦点を当てていく本連載。今回は、インターネットを通じて医療行為を行う「オンライン診療」がテーマ。2018年から病気の種類や一定の要件を満たせば保険診療ができるようになった。診療システムとアプリを開発したインテグリティ・ヘルスケア代表取締役会長の武藤真祐医師に、オンライン診療に今後期待される役割を聞いた。便利になるだけではなく、患者自身が自分の健康管理について高い意識を持つようになり、さまざまな病気の予防、早期治療を実現することも可能だという(聞き手・企画:藤井省吾=日経BP総研 メディカル・ヘルスラボ所長)。

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情報通信技術(ICT)の進歩は医療の世界にも大きな変革をもたらそうとしている。その一つが、インターネットを通じて医療行為を行う「オンライン診療」だ。2018(平成30)年度診療報酬改定により、公的医療保険でオンライン診療が受けられるようになった。オンライン診療は、高血圧症や脂質異常症などの慢性疾患で、定期的に通院している患者の利便性を高めると期待されている。忙しい人が診療所へ行く負担を減らす、介護が必要な人を家族が診療所に連れて行く負担を減らすといった効果が期待されている。

オンライン診療にはさまざまなシステムが登場しているが、武藤医師が開発に関わった「YaDoc(ヤードック)」の機能は「オンライン問診」「モニタリング」「オンライン診察」から構成される。オンライン問診は、疾患別に用意された質問項目を画面の説明に従って入力するもの。モニタリングは、患者が家庭で体重や血圧などを測ってデータを入力し、情報を医師と共有する機能だ。そして、オンライン診察はいわばテレビ電話による診察。予約した診察時間になると医師からコールがあり、電話をとる感覚で診察開始。お互いの顔を見ながら会話ができる。

YaDocの場合、オンライン診察の機能に加えて、通常の外来診療では診察時だけしかとれない患者情報を、モニタリングする仕組みも装備した。また、診察前に問診事項の質問にあらかじめ入力することで、効率的に問診ができる。単純なオンライン診療にとどまらない3つの機能で、患者さんの個別情報に寄り添う医療が可能になる。

――武藤さんがオンライン診療の重要性に注目するようになったきっかけについて教えてください。

武藤 オンライン診療に注目するようになった理由は3つあります。まず、私は、循環器専門医として20年間を過ごし、その間に入院、外来、在宅と幅広い立場で患者さんを診てきました。そのなかで感じていたのは外来診療の限界でした。医師は、果たして患者さんの本当の状態をどれほど分かった上で診療できているのかという疑問を感じたのです。

医師と患者さんの新しいコミュニケーション手段に

――確かに、これまでの外来診療では、定期的にきちんと通院される患者さんでも、通院と通院の間の病状や生活習慣について、医師は知る方法がありませんね。

武藤 そのことが問題視されるようになった背景には疾病構造の変化があります。かつての病気は感染症が中心。病原体を明らかにして使用する薬剤を選べばいい。そこには患者さん自身が積極的に治療に関与する必要はありませんでした。

それに対して現在、人々の健康を脅かしているのは、高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病です。生活習慣、社会的要因、遺伝的要因、経済的要因と、さまざまな要因が病状に関わるなか、医師にとって薬の処方以上に大切なことは、患者さん自身に食習慣、運動習慣などの「行動変容」を促すことです。

現在の外来診療がそれに応えているかというとちょっと心もとない。これまでの外来診療では通院と通院の間に患者さんがどのような生活を送っているかはほとんど分かりません。生活改善を指導するなど、患者さんの行動変容を促す努力もしていますが、月に1度の指導で習慣を変えることは難しいでしょう。

――繰り返し、繰り返し指導して、やっと患者さんの行動変容につながる。そのためには、オンライン診療のような医師と患者さんの新しいコミュニケーション手段に対する期待が高まりますね。

超高齢化で通院が難しい時代には新しい仕組みが不可欠

武藤 オンライン診療に注目した2つ目の理由は、患者さん側が抱える問題です。日本の医療は世界的に見ても優れた皆保険制度とフリーアクセスがある一方で、高齢化の問題が深刻化しています。認知症のように、病院に行くことを忘れてしまう、病院に行ったら帰ってこられないといった問題が既に現実のものになっています。やがて、患者さんが外来にきちんと通うことが難しくなる時代がやってくるのです。

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