牛乳のコクは、生乳を加熱した際の「焦げ」によって生まれるという。しかし生乳の焦げが多すぎるとコクは強くなるものの、のどごしが悪くなってしまうため、目標としている「コクがあるのに後味すっきり」にはならない。そのため、加熱しすぎない絶妙なバランスが求められた。
従来の殺菌設備ではなかなか思い通りの味にならず、国内製造元の泉南乳業の工場で試行錯誤を重ねた。最終的に設備改良まで行った結果、出来上がった製品は「飲んでみると思わず『やっぱり違うね』という感想が漏れるほどのクオリティーに仕上がった」(吉岡リーダー)。

商品が完成したあとは、パン好きのブロガーやパンを愛好する人たちが集まる会に足を運び、商品の試飲会を行った。「パン好きな人たちに実際にパンと一緒に飲んでもらい、約3カ月間にわたって感想を聞いた」と吉岡リーダーは語る。「あんパンやメロンパンなどの甘い菓子パンと牛乳を合わせて飲むことは定番」(吉岡リーダー)。だが、パンが好きな人たちからは、総菜パンやカレーパンなど味の濃いパンにも合うと「お墨付き」を得られた。
一般的に、牛乳が好きな人はコクがあり、濃厚な味を好む。だが、パンと一緒に牛乳を飲むとなると、パンの味を邪魔しない、すっきりした飲み口が好まれる。後者を意識した商品であることから、「牛乳独特の臭みがないから、これなら飲める」という牛乳嫌いの社員も多い。
週に100本売るベーカリーも
発売後は、パン関連のイベントにも出展を重ねた。さらに、流通経路をベーカリーに絞り、取り扱い店舗数が少なかったことが、パンが好きな人たちの間で「レア感」を生んだ。商品を販売するフードカーは毎回大盛況。消費者の注目を集め、「やっと(商品が)買えた」と言う声も聞かれた。
また、白を基調としたシンプルなパッケージにしたことで、「これかわいいね」と手に取ってもらうことに成功したという。Instagramではお気に入りのパンと一緒に商品を並べた写真を中心に、「パン好きの牛乳」というハッシュタグ付き投稿が1500件以上並ぶ。

独特の商品名も、ベーカリーの店頭で目を引いた。出荷本数では発売から約3カ月後の18年7月を100とすると11月では2.3倍以上の売り上げ。これは同社の想定を超える売れ行き。全国のベーカリーでも試飲会を行い、商品のファンやリピーター獲得につなげている。
週に100本以上売れている店舗もあり、「牛乳がこんなに売れるとは思わなかった」という驚きの声も聞かれるようになった。
次の商品は「小容量」と「カフェオレ」
今後は、スーパーマーケットなども含めた販路の拡大を目指す。「18年12月時点で販売店舗は500を超えているが、19年3月までには1000店舗を目指したい」と吉岡リーダーは意気込みを語る。
さらに、イートインできる店舗に置かれることも想定し、その場で飲むことのできる200ml入りも19年中に発売予定だ。家庭で消費する持ち帰り用は500ml、その場ですぐに飲む用は200mlとラインアップを拡大。より商品認知を高めると共に消費者ニーズに合わせたすみ分けを図る。
また、関連商品として、19年中に牛乳をベースにしたカフェオレを発売予定。パンの食事をサポートするというシーンを意識した商品として、シリーズ化していく計画だ。
(ライター 秋元沙織)
[日経トレンディネット 2019年1月16日付の記事を再構成]