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千葉・西船橋でさく裂 「小松菜ハイボール」パワー 探訪!ご当地ブランド(1)

2019/1/25

西船名物の「小松菜ハイボール」 当地では「小松菜焼きそば」などコマツナメニューが続々と登場している

それは鮮烈な出合いだった。2018年末、食べ物名所を巡る知人との定例の飲み会で、千葉県船橋市西船橋地区の居酒屋に赴いた時のこと。目の前に現れたのが、黄色いレモンがジョッキの縁に乗った緑色のハイボールだ。「これが西船でイチ押しの小松菜ハイボールです」。船橋をよく知る女性が解説してくれた。「正しい飲み方はね、レモンを絞って、そのまま一気に沈めちゃうの」

一見、青汁そのもの。苦いだろうな、と覚悟してグラスに口を付けると、意外にもほんのりとした甘さと酸味、野菜ジュースのような爽快さがウイスキーと混じり合い、いくらでも飲める気がしてくる。のどごしもいい。「おっ、なかなかいけますね!」と私。向かいの席でゴクリと飲んだテレビアナウンサーの口の周りには、「くまモン」の唇のような緑色の輪が付いている。お互い、笑いながら追加注文した。

なぜ西船橋で「小松菜ハイボール」なのか。その秘密に迫り、西船橋のコマツナが地域ブランドとして弾けた光景をリポートしよう。

コマツナの名の由来は有名だ。徳川八代将軍・吉宗がタカ狩りに小松川村(現・東京都江戸川区小松川)で休息した際、そこで食べた青菜が気に入り、コマツナと命名されたと言われる。スーパーなどの店頭には通年で並ぶが、本来、俳句では冬の季語である。

江戸川を挟んで、小松川の東側に位置する船橋市。人口は現在、約63万5000人と政令市並みだ。全国に54ある中核市の中ではトップ、都道府県人口ランキングの最下位・鳥取県を上回る。中でも西船橋はJR総武線、武蔵野線、地下鉄東西線など5路線が乗り入れており、乗降客数は千葉県内で1、2位を争う。

悩みは「千葉都民」という言葉があるように、圧倒的に東京へ通う住民が多いこと。典型的な「ベッドタウン」で、寝るためだけ、休日だけを地元で過ごす住民が多い。人口は増えても、住民は街に魅力を感じているのか? そんな危機感から「コマツナで街を元気にしよう!」と立ち上ったのが、西船橋のコマツナ生産者と飲食店主らだった。

生産者のリーダー格が、農家の6代目、平野代一(しろかず)さんだ。根っからの船橋っ子。高校時代は国体の成年男子65キロ級フリースタイルで優勝し、日本体育大学レスリング部に進んだ。船橋市在住の女子プロレスラー、長与千種さんとも親交が深い。

平野さんは語る。「以前、江戸川区の小松川と西船橋の間で花嫁を『縁組』する慣行があり、私の祖母の姉妹も江戸川区へ嫁入りし、コマツナに関する情報交流がありました。戦時中は江戸川区から疎開者も来て、西船橋でコマツナ栽培が盛んになったようです」

高度経済成長と東京一極集中で、一気に宅地化が進んだ。「子供の頃はダイコン、ネギ、ニンジン、各種葉物の畑が一面に広がり、東京タワーが見えた」という船橋も、農地面積が狭まり、新興住宅地に変貌する。狭い土地で複数の農産物を作っても、収入は知れたもの。そこで「西船橋ひらの農園」では1982年、平野さんがコマツナに特化することにした。現在8カ所ある畑は合計2ヘクタールほど。「コマツナは露地栽培やハウス栽培で年7~8回は収穫が可能。種や減農薬農法などの研究に専念して安全・安心を売り物にすればブランド化できる」と考えた。

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