だが今や、たばこを吸う人は採用しない企業も珍しくない。人工知能(AI)を開発するHEROZもその一つ。「社員の多くはきつい、帰れない、給料が安い、3K職業と思われているシステムエンジニア。イメージを払拭したい」(高橋知裕代表取締役)。喫煙者という理由で採用を断ったこともある。

事業所の5割、屋内に喫煙所なし

厚生労働省の17年の調査では、屋外を含めた敷地内の全面禁煙に取り組む事業所は全体の14%。「建物内禁煙」も35%に上り、屋内でたばこを吸えない事業所は国内の半数に迫る。こうなると対応が遅れている企業には危機感すらあるようだ。

オリンパスでは2年後をメドに社内の喫煙スペースをなくす。同社は医療用の内視鏡の世界大手。笹宏行社長は「肺がんを調べる医療機器メーカーとして社内禁煙は必須」ときっぱり。顧客である病院関係者の視線を意識する。同社で海外営業を担当する西橋和寛さん(59)は30年来の喫煙と昨秋に決別した。「社内の取り組みをきっかけに念願の禁煙ができました」と安堵の表情だ。

たばこの有無は、投資家の評価材料にもなりつつある。経済産業省と東京証券取引所が、社員の健康管理に積極的な企業を選ぶ「健康経営銘柄」は、19年から新たに分煙の取り組みが審査の対象になる。ドアなどで周囲から閉ざされた喫煙室があることが条件だ。

日本たばこ産業(JT)の調査によると、国内の18年の喫煙人口は1880万人と10年前に比べて約3割減った。喫煙率も18%と約8ポイント下がっている。健康志向に加えて相次ぐたばこ増税を受けた値上げや、全面禁煙の飲食店・商業施設が増えたことが理由とみられる。

20年の東京五輪・パラリンピックに向けて、東京都では飲食店などを禁煙とする受動喫煙防止条例が昨年に成立した。たばこを吸う人を取り巻く環境は厳しくなる。

最近では周囲に配慮して、紙巻きたばこに比べ煙や臭いが少ない加熱式たばこを吸う人も増えている。森ビル(東京・港)は18年秋、大型オフィスビル「愛宕グリーンヒルズMORIタワー」に加熱式たばこだけが吸える喫煙室を設けた。「テナント企業の健康経営や働き方改革をバックアップする」(同社)狙いだ。

(下村凜太郎)

[日本経済新聞夕刊2019年1月19日付]