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世界に通じる人材とは 常識を疑い自分で考える ダイバーシティ進化論(出口治明)

2019/1/26

写真はイメージ=PIXTA

立命館アジア太平洋大学(APU)の学長となって元日で1年。昨夏、「学長会議」に初めて参加した。これは国公立か私立かを問わず大学の学長が50人ほど集まり、2泊3日で学び合う合宿のようなものだ。そこでの議題の一つに、「18歳人口が激減。大学はどう生きるべきか」というテーマがあった。他大学との統合か連携か。この問いに対する解はいずれかしかない。皆、深刻な表情に。

「待ってください」。思わず口を挟んだ。確かに国内だけを見れば18歳人口は減っていく。だが、世界の人口は増えていて中産階級も増加している。インドを見よ。モディ首相は大学が1200も足りないと言っているではないか。グローバルな視点に立てば大学は成長産業だ。こう話したら皆、考え込んでしまった。

Think globally。僕に言わせれば、この言葉は「数字やファクト、データを踏まえて自分の頭でロジカルに考えること」と同義だ。明確な根拠があれば世界中の人に説明できる。グローバルな仕事でなくても、この考え方は生きる。別の教育関係者の会議でも、僕はその発想から1つの提案をした。

会議の議題は高校教育のあり方だった。多くの高校は国立と私立で理系・文系に分けて教育している。だが、文系の経済学部も数学での受験があり、その分け方は僕には疑問だ。代わりに3割程度は好きなことを徹底する変わり者コースとし、普通コースとの2コースにするのがいいと思う。アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏のようなチェンジメーカーは変わり者からしか生まれない。そう話すと教育界は何から始めたらいいかと聞かれた。

そこで次の提案をした。「校則を一から読み、自信を持って根拠を示せるもの以外廃止を」。あるAPUの学生は高校時代、長い髪を頭上で束ねて怒られたという。「後ろで結ぶ」が校則だ、と。「結ぶ」は分かる。だが、無意味な場所の指定はパワハラそのものだ。教育者が校則すら自分の頭で考えずに、子供たちに「自分の頭で考えろ」と説いても無理だろう。

社会常識を疑い、数字やファクトから自分の頭で何が人間にとって大事かを考える。これがThink globallyの神髄だろう。ダイバーシティ(人材の多様性)の時代。性別や年代を越え、様々な人と意思疎通する際も、この発想は役立つはずだ。

出口治明
立命館アジア太平洋大学学長。1948年生まれ。72年日本生命に入社、ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを務める。退社後、2008年にライフネット生命を創業し社長に就任。13年から会長。17年6月に退任し、18年1月から現職。『「働き方」の教科書』、『生命保険入門 新版』など著書多数。

[日本経済新聞朝刊2018年12月17日付]

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