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著者に聞く 仕事の風景

交渉は勝負じゃない 「双方納得」の理想へ導くスキル 「おとしどころの見つけ方」 松浦正浩氏

2019/1/23

政府は18年12月、国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を発表したが、交渉術の観点からみたらどうか。松浦氏は「交渉を仮にゲームとみるなら、最適解とはいいにくい。国内事情に突き動かされた判断理由が見え見えで、復帰を材料に使っての瀬戸際の駆け引きが仕掛けにくい」と述べ、辛い点数をつける。「勝手に離脱する態度を見せてしまったので、ほかの国際的な交渉でも信頼が揺らぎかねない。外交交渉全体を俯瞰(ふかん)するアプローチが望ましかったのではないか」(松浦氏)

■交渉は「劇」 気持ちに余裕を

交渉のテクニックからいえば、舞台をIWCに限定しない戦術もあり得ただろう。別のステージを用意して、交渉条件を多元化する手口だ。たとえば、春のキャンペーンを巡る商談の場合、春は相手の利益を厚めにし、その分を夏に戻してもらう。期間を広げて考えることで交渉の余地を増やすテクニックだ。枠の「ずらし」を織り込んだ柔軟な態度で臨めば、合意を導きやすくなる。

松浦氏は「交渉は一種の即興劇。日本人はややまじめすぎるところが演者に不向き。相手も演じていると意識し、こちらも余裕を持って振る舞うのが合意を助ける」と話し、懐の深いパフォーマンスを促す。相手の言動を真に受け、本気で怒り出すようでは、落としどころを見付けにくくなるばかりだ。

交渉術が役立つのは、仕事の場面だけではない。物を買ったり、旅行の日程を決めたりといった、日常の幅広い場面に交渉がかかわっている。「家族との約束や家事分担の取り決めなど、プライベートな時間にも交渉スキルの出番は多い」(松浦氏)。我を通してばかりでは、家族に嫌われてしまう。ワークライフバランスを保ち、プライベートな時間を楽しむうえでも、「妥当な落としどころ」に導くスキルは味方になってくれるはずだ。

松浦正浩
明治大学専門職大学院ガバナンス研究科専任教授。東京大学工学部土木工学科卒。米MIT修士、Ph.D.(都市・地域計画)。三菱総合研究所研究員、東大公共政策大学院特任准教授を経て現職。著書に「実践! 交渉学」(ちくま新書)など。1974年生まれ。

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