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交渉は勝負じゃない 「双方納得」の理想へ導くスキル 「おとしどころの見つけ方」 松浦正浩氏

2019/1/23

ビジネスシーンでの交渉では、お互いがそこそこ得をするという成功のイメージを描くのが望ましく、「最初から自分勝手なゴールを設定すべきではない」(松浦氏)。双方の利益になりそうな落としどころを見すえつつ、ひとつの案にとらわれずに次善の策、その次の代案と柔軟に条件をずらし、軟着陸できる場所を探る。社風やマインドが異なる他社や異業種との連携を成功させるには、こうした交渉術も重要で、「チームをまとめるリーダーシップを発揮するうえでも、欠かせない資質になってきた」(松浦氏)。

松浦正浩氏

幼いころから年齢や立場の異なる人たちと接し、家庭や教室とは別のカルチャーに触れることが「交渉耐性」を高めるという。ただ、近年はそうした機会が減ったせいか「交渉に苦手意識を持つ若者が少なくない」(松浦氏)。交渉にこわさや面倒くささを覚える人も多いようだ。松浦氏は「自分の置かれた環境にこもってしまうと、相手の考えを読む能力が育ちにくい。他者との接点は大人になってからも、広げ続けるのが望ましい」と話す。

交渉では、相手が何を重んじているかを察知する目配りも欠かせない。たとえば、メンツのような感情的な要素が絡むと、「たとえ損をしても、ここは譲れない」といった合理的でない反応が生まれがちだ。松浦氏は「感情的な対立を避けるのは、交渉をややこしくさせないうえで注意すべきポイント」とアドバイスする。

■駆け引きのコツ、値切って体得?

日常の気楽な交渉トレーニングとして、値切りに挑戦してみる手もある。たとえば、海外の土産物店では値段はあってないようなものだ。欲しいそぶりを見せれば、吹っかけてくる。「いらない」と断って店を出ようとすれば、いきなり半額になることもある。そこですかさず「2個買えば、もっとまけてくれるよね」と踏み込むといった具合だ。

日本でも観光地の朝市などでは、コミュニケーションの一環として値段交渉は生きている。かつては交渉による大幅値引きが当たり前だった東京・秋葉原の電気街でも、定価販売が主流になったが「まだ値引き交渉に応じてくれる店もある。買い物の機会があれば試してみるのもいい」(松浦氏)。値引きを勝ち取って終わりでなく、お互いに笑顔で別れられるような交渉を心がければ、駆け引きのコツや間合いを学べるだろう。

互いの国益をかけた交渉といわれるのが外交だ。この分野では、「ディール(取引)」をちらつかせて脅しをかけるトランプ米大統領を筆頭に、揺さぶりやブラフ(はったり)などの交渉戦術がこれまで以上に目立つようになってきた。たとえば、ロシアのラブロフ外相は北方領土を巡って、日本の主権を認めず、「北方領土」という呼び方にも文句をつけた。しかし、松浦氏は「ごく当たり前の交渉手順。最初の段階から『2島ずつ』などと条件を示して譲歩するはずがない。最初はガツンと強く出てくる。過剰に反応するのは、交渉術としては好ましくない」とみる。

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